
飛岡内科の生け花は待合室だけではない。これは、玄関に飾った芍薬(シャクヤク)。
前回は、IT革命によって、モノと情報が世界中を駆け巡る時代になったこと、その中で、政府がレセプトのオンライン化を進めようとしているが、様々な障壁があることをお話しした。一体、どんな障壁があるのかについて述べることにする。
2005年4月に、個人情報の保護に関する法律が発効した。この背景には1980年のOECD(経済協力開発機構)理事会勧告がある。つまり、個人情報保護問題は、日本独特の問題ではなく、全世界的な問題だと認識することが重要である。
インターネットのIPパケットは、誰にでも見える仕組みであるため、個人情報を流すには危険な媒体である。このため、流通する情報には暗号化が必要であり、一部では「1対1 VPN(1 : 1 Virtual Private Network)」ルーターが使われている。医療現場には個人情報が氾濫しており、医療機関同士が連携するときには、情報の暗号化は必須である。
VPNを始めとするセキュアなネットワークを構築するには、個人を特定する電子認証が必要になり、これは電子認証基盤(PKI)と呼ばれている。そしてPKIを運用するために必要なのが電子認証局(CA)である。この一例として政府認証基盤(GPKI)を参照して欲しい。本年6月1日、内閣官房IT担当室より「重点計画-2006(案)」に関するパブリック・コメントの募集が行われているので、これも参考にして欲しい。
さて、政府は、2010年までにレセプトのオンライン化(オンラインレセ)を実現しようとしている。このためには、多数の医療機関が、必要に応じて任意に、暗号化通信環境が構築できる「n:n VPN」を導入する必要がある。そして、これを運用するためのCAも必要である。現在のところ、技術的な問題はほぼ解決されているが、経済的な問題で、どちらも実現されていない。仮に今、診療報酬をオンライン請求するとしたら、ISDN回線を使うしか方法はない。IT革命も新しい局面を迎えており、早期の社会的インフラとしてCAを整備する必要がある。