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家庭が崩壊する前に読む本

2011/11/29
引地悠

 医療関係でない方に、主人の職業を尋ねられたとき、「医師です」と答えると、「まあ、夫婦そろってお医者様なんて、すてきですね!」と言われることがあります。皆さんは、この言葉を受け取って、素直に「ありがとうございます」と言うことができるでしょうか?

 私は、正直なところ、「そうでもないですよ」と、複雑な心境で答えていました。というのも、「お医者様だったら、最高ですね」という言葉には、高学歴、高収入など、社会的な安定性に加えて、「お医者だったら、人間的にも素晴らしい方で、家庭も円満に違いない」という期待が、少なからず込められているように感じていたからです。

 期待を裏切るようで申し訳ないですが、医師だからといって、聖人君子になれるわけではなく、1人の人間としての弱さや欠点を持っています。「もはヒポプロジェクト」の尾藤誠司先生がブログで提言されていましたが、「2011年の日本に生きる医師は、もはやウルトラマンでなくていい、もう少し弱く、堂々とせず、しなやかであってもいいのではないか」というお言葉には、私も深く共感しました。

 また、本田宏先生がご紹介されていた、植山直人先生のご著書『起ちあがれ!日本の勤務医よ―日本医療再生のために』を読めば一目瞭然の通り、日本の勤務医のほとんどは過酷な労働環境を「当たり前」のこととして日々の業務をこなしています。寝不足で疲労が重なれば、誰しも不機嫌になったり、相手への心遣いができなくなるのは当然のことです。

 このように、第一線で活躍する医師の周りで、一番悲鳴を上げているのは、ほかならぬ家族ではないでしょうか。仕事のため帰宅が遅くなれば、コミュニケーションを取る時間自体が少ない上、仕事で疲れ切った心と体では、家族に対して「社会人として最低限の」思いやりを示すことも、容易ではなくなります。ひいては、家庭崩壊を招くのではないか、という心配も否めません。

著者プロフィール

引地 悠●ひきち はるか氏。2004年宮崎大卒後、洛和会音羽病院(京都市)にて初期研修2年、後期研修1年。07年4月中通総合病院(秋田市)総合内科で後期研修。09年1月に第1子を出産し、10年1月に復職。

連載の紹介

引地悠の「仕事と育児のベストバランスを求めて」
「結婚して子供を産んでも、臨床や研究の第一線から退きたくない」と考えていた引地氏。2009年1月に第1子を出産し、育児休業を1年間取得後、2010年1月に復職しました。新米ママ女医として盛りだくさんの日常をつづります。

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