日経メディカルのロゴ画像

今どきの看護学生に「ウケる」微生物学

2011/06/16
引地悠

今年の講義風景です。

 もう2年以上前のことになります。育児休業中に、ある看護学院の校長先生から、1本の電話が入りました。「来年から、看護学院で微生物学の講義をやってくれないか」という依頼でした。

 私は微生物学を専門としているわけではありませんが、快く引き受けることにしました。研修医の頃、「心電図を初めて教えてもらうときは、循環器の先生より、呼吸器の先生にお願いするくらいがちょうどいいよね」と、同僚と笑いながら話していたことを思い出し、「専門ではなく、ちょっとかじった人」としての強みを生かせば、わかりやすい講義ができるかもしれない、と思ったのです。

 そこで、昨年から、看護学院の非常勤講師として、1年生向けの講義をスタートしました。

 初めて教室に足を踏み入れたときの緊張は、忘れられません。総勢50人の学生さんから、一斉に注目を浴びたので、顔は真っ赤になり、心臓がバクバク鳴り、手に汗をかきました。

 「微生物学」というと、細菌やウイルスの名前がたくさん出きて、敬遠されがちな科目だろうな、と予想していました。そこで昨年は、「国家試験に出るレベルで、わかりやすく説明すること」を目標にしました。微生物学のドリルに目を通し、それに応じてパワーポイントを作り、講義に臨みました。

 しかし、どんなに簡単でわかりやすいスライドを作っても、必ず何人かは、居眠りをする学生さんがいました。起きている学生さんたちも、どことなくぼおっとしていて、手持ち無沙汰な様子。「どうしたら魅力的な講義になるのかなあ」と、ずっと悩んでいました。

 そんなある日、アレルギーをテーマに講義をしたときのこと。I型からIV型のアレルギー分類を説明しようとして、この複雑な過程をどう説明しようかと逡巡し、私は、半ばやけくそで、チョークを手に持ちました。

 「今から、4コマ漫画で、説明します」

 「ほら、まず異物が入って来ると、IgEっていう抗体ができるでしょ。このIgEは、肥満細胞という細胞にくっついて、スタンバイしてるわけ。それで、もう一度同じ抗原が入ってきたら、抗原は、また同じように、肥満細胞に乗っているIgEにくっつくんです。そしたら、スイッチオン! 肥満細胞から、ヒスタミンが出るんですよね。血管が膨らんだり、粘膜が腫れたりして、蕁麻疹や気管支喘息が起こります。これが、I型アレルギーの反応です」――。

 黒板に漫画を描いて説明しながら、振り向いたとき、びっくりしました。学生さんたちの顔つきが、興味津々といった様子で、それまでとはまるで違って見えたのです。気を良くした私は、IV型アレルギーまで、すべて4コマ漫画風に説明しました。結局、この講義では、寝る学生さんは、いませんでした。

著者プロフィール

引地 悠●ひきち はるか氏。2004年宮崎大卒後、洛和会音羽病院(京都市)にて初期研修2年、後期研修1年。07年4月中通総合病院(秋田市)総合内科で後期研修。09年1月に第1子を出産し、10年1月に復職。

連載の紹介

引地悠の「仕事と育児のベストバランスを求めて」
「結婚して子供を産んでも、臨床や研究の第一線から退きたくない」と考えていた引地氏。2009年1月に第1子を出産し、育児休業を1年間取得後、2010年1月に復職しました。新米ママ女医として盛りだくさんの日常をつづります。

この記事を読んでいる人におすすめ