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不定愁訴の患者さんから学ぶこと

2010/05/25
引地悠

桜の名所、角館の桧木内川添いの桜並木です。

 内科で外来診療に携わっていると、限られた診療時間の中で、有用な問診を取ることができるかどうかが、その後の診療内容の鍵を握っていることを強く感じさせられます。私はまだ卒後7年目で、問診の取り方を改善するにはどうしたらよいか、日々模索しています。

 最近、問診の取り方を磨いていく上で、いくつかの段階があることに気付きました。

 研修医として働き始めたころは、問診を「open question」で始めたはいいものの、患者さんが新たな症状を口にするたびに、「えーと、この症状ならAの疾患とBの疾患を鑑別に挙げるべきだから、これらに関連した症状を聞かなくちゃ…」と、頭の中は鑑別診断名とその症状、予想される身体所見で、はちきれんばかりに。そこで、患者さんの話をさえぎって「この症状はどうですか?あの症状はないですか?」と、会話の流れを一方的に乱しながら問診を進めていたように思います。

 また、この時期は上級医師たちが使う医学用語や俗語に慣れるのに精一杯で、カルテの書き方も、“主訴:数日前からcough、sputum”のように、わざわざ症状だけを英語で表記したりと、日本語と英語がごちゃまぜになってしまって、非常に見苦しいものだったろうと思います。

 次の段階は、研修医2~3年目のころでしょうか。この時期にはある程度、病歴のパターンがつかめるようになり、問診を進めて行く中で、「ああ、これは風邪だな」とか、「これはちょっと危ない疾患かもしれないな」とか、先が見えてくるものです。そして、特にこのころは短時間で要領よく問診を終わらせようと、躍起になっていました。

 慣れたころが一番危ないと言われるように、落とし穴に落ちやすいのもこの時期かもしれません。風邪だろうと思って帰した患者さんが、重症化して再受診されるなど、苦い経験を持つ先生も多いのではないでしょうか。

 それから数年が経った現在。自分にゆとりが生まれたからか、育休明けで気持ちが新たになったからか、改めて初心に帰り、患者さんの話にじっくりと耳を傾けるようにしています。

 そうすると、おもしろいもので、他の医師から「あの人は不定愁訴だ」「プシコだ(神経質な方や、精神科的疾患の方の俗称)」と“お墨付き”をもらっている患者さんであればあるほど、自分の体の変化に敏感であり、非常に分かりやすい病歴を語ってくれることに気付きました。そのような患者さんの多くは、こちらが相槌を打ちながら熱心に聞いていると、自分がどのように生活している中で、どのようにして具合が悪くなったか、目に浮かぶようなストーリーを語ってくれるので、非常に勉強になります。

著者プロフィール

引地 悠●ひきち はるか氏。2004年宮崎大卒後、洛和会音羽病院(京都市)にて初期研修2年、後期研修1年。07年4月中通総合病院(秋田市)総合内科で後期研修。09年1月に第1子を出産し、10年1月に復職。

連載の紹介

引地悠の「仕事と育児のベストバランスを求めて」
「結婚して子供を産んでも、臨床や研究の第一線から退きたくない」と考えていた引地氏。2009年1月に第1子を出産し、育児休業を1年間取得後、2010年1月に復職しました。新米ママ女医として盛りだくさんの日常をつづります。

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