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おいおい、簡単に医師を辞めちゃいけないよ

2019/04/24
裴 英洙

 ビジネスで起業を考えている医師の皆さま、はっきり言います。起業はやめた方がいい。クリニックの開業も起業だが、今回は除こう。医師免許がないとできない仕事をせず、会社を起こそうと考えている医師の方々が対象だ。

 最近、「医師を辞めて会社を起業しようと思っているのですが……」という相談が本当に多い。特に若手医師からだ。話を聞いていくと、8割以上のケースで「起業はやめた方がいい」と感じる。

 私は大学卒業後、10年ほどの勤務医生活を経て起業したのでほぼ同じ境遇だ。その経験を基に言わせてもらえば、起業は孤独で、苦労が多くて、勤務医よりも給料が低くて、常に人に頭を下げることばかりだ。「先生」とは呼ばれず(笑)、給料が低いただの人になる。猛暑の中、ネクタイとジャケットを着て汗を拭きつつ、クライアントを出待ちすることがある。寒い冬、始発の電車に飛び乗って朝一でクライアントに謝りに行くこともある。1つひとつの行動を通して信頼を重ねて新たな仕事につなげていくその道のりは、思ったより長い。もちろん、ビジネスのやり方を手取り足取り指導医が指導してくれるわけでもない。医療関連の本だけでなく経営に関する本や文献も読まねばならない。日経メディカルだけでなく、日経新聞も愛読しなければならない。

 役職は「社長」なので一見偉そうだ。しかし、起業したばかりの社長というのは、実際は営業担当であり総務担当であり財務担当であり広報担当であり庶務担当になる。一国一城の主だが、社員の誰よりも早く起きて誰よりも遅く眠る。自分の給料は後回しで社員の給料を優先して払わなければならない。自分のスケジュールよりも顧客のスケジュールを優先し、家族との旅行は当分お預けだろう。

著者プロフィール

裴 英洙(ハイズ(株)代表取締役社長)●はい えいしゅ氏。1972年生まれ。金沢大学大学院医学研究科修了。外科医・病理医として勤務後、MBAを取得し2009年に起業。医業経営コンサルタントの仕事の傍ら、再建先で臨床医として医療現場に携わる。

連載の紹介

裴 英洙の「今のままでいいんですか?」
医療機関の経営問題を解決しないと、医師が意欲を持って働けない—。そんな危機感からMBAを取得し、コンサルティング会社を設立した異色キャリアの医師。これまでの経営支援の経験から、病医院で見過ごされがちな問題やエピソードを語ります。
裴英洙氏による書き下ろし!
『医療職が部下を持ったら読む本』
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 本書は、診療科長、看護師長といった病院の中間管理職や、診療所の院長など「部下を持ったばかりの医療職」に求められる経営・マネジメントの基本スキルをまとめました。「カリスマ医師に経営陣が強く言えない病院」や「医療部門と事務部門に壁がある組織」など、医療現場ならではの20の事例を題材にしており、実践的な知識が身に付きます。
(裴英洙著、日経ヘルスケア編、日経BP社、2400円税別)

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