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日々の忙しさ、気合で凌ぐのはもう無理です!

2017/12/26
裴 英洙

 昨今、労働生産性の議論がにぎやかだ。

 “気合いで乗り切るべきだ”という一部の医師たちの非生産的な議論もあるが、医療現場は無視できないくらい労働環境の苛酷さが増してきている。一方、働き方改革における政策動向や労働基準監督署の注意勧告により、医療機関では「仕事に集中して生産性を高めるようにしよう!」といった掛け声をよく耳にするようになってきた。そこで部下は上司に聞く。

部下 部長、教えて下さい。どうやったら生産性って高まるんでしょうか?
部長 うーーーん……。

 皆さんの職場では、生産性向上の問題に対して、答えに詰まったり、「意識の問題だよ!」と、なんとなく“気合”や“精神論”で片付けてしまっていることはないだろうか? 生産性の上げ方について正しく理解していない管理職が多い場合、気合と根性で生産“高”(≠生産性)の向上を強いる従来型の労働強化に落ち着いてしまうことがある。生産性という質を上げず、生産高の数字だけを追っているようでは根本的な解決にならない。

 今回は、医療職の献身性による自己犠牲の精神論や法的整備の不備などの批判は置いておき、医療機関における労働生産性の向上についてマネジメント視点から見た3つのポイントをお伝えしたい。


1:“残業ありき”の仕事スケジュールを見直す

 効率性や生産性の対極を意味する言葉は“ダラダラ”だ。ダラダラは締切の概念がないと生じてしまう。日々の仕事も同じだ。「残業時間があるからいいか」と考えると、ダラダラと日中の仕事を進めてしまう。もちろん、緊急対応や重症患者の診察などで生じる勤務時間の延長は仕方がない。しかし、日中に時間があるにも関わらず、定時後に医局でダラダラとしながら患者サマリーを書くようなことを許す組織文化はいただけない。組織の姿勢として残業を否定的に考える文化を育てていくことが重要だ。管理職が残業に関して鋭敏な感覚を持っていないと、「残業は増殖する」ものである。


2:あえて“考える時間”をスケジュール化する

 仕事をせずに“考える時間”を1週間に1時間程度または3日に30分程度確保することが、残業時間の短縮につながる。仕事をしないため労働生産性は低下するのでは? と思われがちだが、仕事から離れて立ち止まり、じっくりと自身の業務内容を考えて整理する時間をあえてつくるのだ。

 つまり、「業務の棚卸し」のための時間である。チームメンバーにお願いすることをリスト化したり、自身のタスクの優先順位をつけたり、今必要な業務であるか否かの判断をしたりする時間である。私たちは多忙を極めるとつい目の前の仕事や声が大きい人からの依頼を優先しがちになる。その結果、混乱やミスの温床となり生産性を低下させる。日曜大工は、いきなりやみくもに木を伐り始めるのではなく、設計図をしっかりと描いてから取り掛かるはずだ。仕事も同じで、業務の順番やタスクの依頼対象などの設計図を描くことで、その後の大幅な時間や労力の短縮、無駄の排除につながり生産性は向上していく。


3:ムダの温床の委員会や会議を見直す
(関連記事:病院をダメにする会議の3大条件

 以前、本稿でも書いたが、医療機関では委員会や会議、症例検討会がやたらと多い。忙しい参加者が一同に集まり、建設的な成果が出ればよいが、「今日って何のために集まったのだろう……」と不毛な会議や委員会は徹底的に排除すべきだ。

 まずは、会議や委員会を滞りなく運営するのためのグランドルールを設けることをお勧めする。例えば、(1)終了時間の厳守、(2)議事録の作成、(3)スタート時に前回会議の振り返り、(4)一人一発言以上、などだ。しっかりしたルールを設けて参加者皆で共有することで、無駄を排除し、集中した時間を創出する。そして、勇気を出して、委員会や会議の参加者満足度調査を実施してほしい。不満足度が高い会議や委員会は優先してルール等を見直すべきだろう。

著者プロフィール

裴 英洙(ハイズ(株)代表取締役社長)●はい えいしゅ氏。1972年生まれ。金沢大学大学院医学研究科修了。外科医・病理医として勤務後、MBAを取得し2009年に起業。医業経営コンサルタントの仕事の傍ら、再建先で臨床医として医療現場に携わる。

連載の紹介

裴 英洙の「今のままでいいんですか?」
医療機関の経営問題を解決しないと、医師が意欲を持って働けない—。そんな危機感からMBAを取得し、コンサルティング会社を設立した異色キャリアの医師。これまでの経営支援の経験から、病医院で見過ごされがちな問題やエピソードを語ります。
裴英洙氏による書き下ろし!
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