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無意識に散らかってしまう話し方を直すコツ

2017/07/03
裴 英洙

 世の中には膨大な知識を持っているすごい医師がいる。専門分野の話題になると流れるように言葉が出てきて、何時間でも喋り続けられるような医師だ。そのような人と話をすると、知識量が膨大で圧倒されることが多い。

 しかし、話の内容があっちこっちに飛んだり、ある内容は深いもののある内容は浅く、ジェットコースターに乗っているかのごとく、内容レベルの幅や高低差に振り回されることもある。要するに会話が「散らかって」いるのである。膨大な知識を理路整然と話してくれると理解も進むが、膨大な知識を同時多発的に浴びせかけられると頭の回転がついていかずグッタリしてしまう。

 さて、マネジメントの現場では多種多様な職種や年代、様々な価値観を持った関係者が参加するため、それぞれの職業観やプロフェッショナル意識が入り混じって議論が進む。だからこそ、知識のシャワーを浴びせ合うのではなく、内容レベルや視座をある程度そろえ、理路整然と物事を見て、論点を整理する視点が必要となる。これは知識の多寡の問題ではなく、その考え方ができるかどうかの視点の問題となる。今回は、視点の整理方法に関してお伝えしたい。

 病院の会議で「外来患者の来院手段を分析し、効果的な病院広告を打とう」という議題が出たと想定しよう。ここで繰り広げられる参加者達の会話を例に挙げてみたい。


医師A 私の外来患者のほとんどは近所から徒歩で来院しています。口コミで当院の評判を耳にしているものの来院したことのない近所の人もいるでしょうから、病院の近くに電柱広告を出すのが良いと思います。

看護師B 公共機関で来院していただければ、病院駐車場の混雑緩和につながりますので、公共機関への広告を提案します。

医師C いやいや、高齢の患者さんも増えてきているよ。家族に自家用車で送り迎えしてもらった方が助かる人もいるんじゃない。だから、ご家族が道に迷わないよう幹線道路に看板を出すことをお薦めするなあ。

事務職D 病院の近くに電車の駅があるので、駅前看板はどうですか?

議長 うーん、どれが広告効果があるのかなあ…


 多くの会議や会話で、参加者が好き勝手に話したために、内容が散らかってしまうのを目にする。この散らかり具合を抑える手段として、MECE(ミーシー)と呼ばれる考えがある。ミーシーとはMutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字をとった言葉で、「モレなくダブリなく=お互いに重なりがないものを集めれば、全てを埋め尽くす」という意味である。前述の会話では、「自転車での来院」は議論されておらずモレている。一方、公共機関の中には電車が含まれているためダブっている。図1に記してみてみると、左図では「モレ」があり、右図では「ダブリ」がある。前述の会議では、「来院手段をMECEで考えてみよう」と皆の視点が一致すると、そこから展開される議論や会話の無駄が少なくなってくる。聞いている方はスムーズに頭に入り、納得度が高まっていくものだ。

 今回は会議を例に挙げたが、これは自分1人の頭を整理することにも役立つ。

著者プロフィール

裴 英洙(ハイズ(株)代表取締役社長)●はい えいしゅ氏。1972年生まれ。金沢大学大学院医学研究科修了。外科医・病理医として勤務後、MBAを取得し2009年に起業。医業経営コンサルタントの仕事の傍ら、再建先で臨床医として医療現場に携わる。

連載の紹介

裴 英洙の「今のままでいいんですか?」
医療機関の経営問題を解決しないと、医師が意欲を持って働けない—。そんな危機感からMBAを取得し、コンサルティング会社を設立した異色キャリアの医師。これまでの経営支援の経験から、病医院で見過ごされがちな問題やエピソードを語ります。
裴英洙氏による書き下ろし!
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