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バカになる人、なれる人

2014/11/20

 経営コンサルティングの仕事をするようになり、たくさんの経営者やリーダーに会ってきたが、その際に注意して見てきたことがある。

 「優れたリーダーの共通点は何か?」

 人は一定の組織に長く所属しているとその組織の文化や作法に馴染んでしまい、新たな視点を得にくくなる。いわゆる「思考が硬直化する」と言われる状態だ。ルーティンワークをこなすなら問題ないかもしれないが、日々新たな問題や疑問が起こるような世界、特に医療の世界での思考の硬直化は、価値創造の放棄につながる。リーダーはその硬直化を真っ先に回避しないとならない。そこに危機感を持ち、組織活性化を心がけているリーダーには共通点があるように思う。それは「バカになれる」能力だ。ここで言う「バカ」とはネガティブワードではなく、現状の問題点を突破するきっかけとなる姿勢、と考えて頂きたい。では、「バカになれる」を、構成する三つの要素に分けて考えたい。読者の皆さんは、バカにするな!と思わずにお付き合い頂きたい。

1)柔軟な発想力
 「バカ=マイナスなイメージ」と捉えられるかもしれない。しかし、単なる「バカ」と「バカになる」は異なる。自らバカになることに対して「かっこ悪い」「恥ずかしい」と敬遠する方も多いだろう。しかし、本当に自分のため、周囲のためを考えれば、「バカになる」ことがプラスになるシーンは少なくない。仕事での行き詰まりやアイデア枯渇の壁に直面した際、普段の思考の中には「不可能と決め付けていること」が少なくない。そこで、不可能と思われる“バカっぽい”アイデアを出すような視点の切り替えや許容力がその突破口につながることもある。つまり、「バカになる」というのは、硬直的でなく柔軟で多元的な視点を持てるということだ。さらに、頭だけで考えるよりも実際に行動を起こすことがブレイクスルーを作ることもある。いい意味で「バカになり」何も考えずに手を動かすことが大切な時もあるだろう。

2)学び続ける力
 哲学者ソクラテスは「私は何も知らないことを知っている」と言ったという有名な話がある。何ごとも極めれば極めるほど奥が深く自分は何も知らないことに気付く。優れたリーダーは「知らないことを恐れない」。そして“バカになり”頭を下げて教えてもらおうとする。その結果、さらに極みに入っていく。人は「知らない」や「教えて」というと、「そんなことも知らないのか」と言われたりバカにされたりすることを恥ずかしいと思うことが多い。そのような不安は当然あるが、それを克服して素直に「知らない」と言える勇気が、その人の知識や見識をさらに高みに上げる。

著者プロフィール

裴 英洙(ハイズ(株)代表取締役社長)●はい えいしゅ氏。1972年生まれ。金沢大学大学院医学研究科修了。外科医・病理医として勤務後、MBAを取得し2009年に起業。医業経営コンサルタントの仕事の傍ら、再建先で臨床医として医療現場に携わる。

連載の紹介

裴 英洙の「今のままでいいんですか?」
医療機関の経営問題を解決しないと、医師が意欲を持って働けない—。そんな危機感からMBAを取得し、コンサルティング会社を設立した異色キャリアの医師。これまでの経営支援の経験から、病医院で見過ごされがちな問題やエピソードを語ります。
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