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医師のマネジメントセンスを一発で見抜く方法

2014/10/16

 医師にマネジメントセンスがあるかどうかは、その医師が担当している職場を見ると分かることがある。

 ある調査によると、ビジネスパーソンはモノを探すのに年間132時間ほどを使っているらしい。1日8時間勤務とすると、16.5日もモノ探しに費やしていることとなる。医師の皆さんは、何らかの処置をする際に、看護師や研修医に「アレ持ってきて!」と指示したところ、見つかるまで待たされた経験はないだろうか?

 私が外科医のころ、ある患者さんに下大静脈フィルターを挿入する予定であった。しかし、準備していたフィルターとは異なるフィルターが必要となったため、急きょ代替品を準備することとなった。その病院ではあまり使わない機材であったため、看護師さん総出で探し回ってもらった。その間は当然、外科医は待ちぼうけであった。

 皆さんの職場では身の回りにどれだけモノがあふれているだろうか?注射器やテープ等の医療雑貨、カテーテルや縫合糸等の医療材料、何台もあるエコーや稼働率が低いCT等の医療機器など、多くのモノがあふれているはずだ。あふれているモノは“財産”であり、購入時にはお金がかかっている。使っていないモノは無駄な財産であり、つまり“散財”の証である。もしかしたら皆さんの給料になっていたかもしれないお金である。そして、無駄なモノに埋もれて必要なモノを探すための時間もまた“財産”なのである。

 医療職は病院経営層からは「コスト管理の徹底・在庫管理の厳密化」を口酸っぱく言われている。実は、そのコストには2種類ある。「見えやすいコスト」と「見えにくいコスト」だ。往々にして、「見えやすいコスト」だけを意識しがちだが、両方のコストを考えなければならない。

 「見えやすいコスト」は、先に挙げた、過剰もしくは不要な在庫、または物品を保管する場所のコストが代表だ。一方、「見えにくいコスト」は、物品を探す職員の労働時間がまず一番に挙げられる。前述の“モノを探す”時間は職員の労働時間であり、それにも給料は支払われている。仮に、時給1万円の医師が年間132時間を費やすとなると、病院側からすると132万円の無駄なコストとなる。

 我々が初めて病医院にコンサルティングに入る際には、院内の見学を徹底して行う。バックヤードの整理整頓具合、在庫の有無、機材の“探し出しやすさ”などを見せて頂くのだ。そこに「見えにくいコスト」を減らす姿勢が徹底されているようなら、経営改善がすぐにできる風土がある可能性が高い。一方、過剰在庫で整理整頓されていないバックヤード、物を探し出すのに一苦労するような機材配置などを目の当たりにすると、経営に対する意識の低さが現れており、経営改善への道のりは遠いと感じる。

著者プロフィール

裴 英洙(ハイズ(株)代表取締役社長)●はい えいしゅ氏。1972年生まれ。金沢大学大学院医学研究科修了。外科医・病理医として勤務後、MBAを取得し2009年に起業。医業経営コンサルタントの仕事の傍ら、再建先で臨床医として医療現場に携わる。

連載の紹介

裴 英洙の「今のままでいいんですか?」
医療機関の経営問題を解決しないと、医師が意欲を持って働けない—。そんな危機感からMBAを取得し、コンサルティング会社を設立した異色キャリアの医師。これまでの経営支援の経験から、病医院で見過ごされがちな問題やエピソードを語ります。
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