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「俺は肩書で勝負するような医者じゃない!」

2013/10/25

 皆さんは、自分の名刺をお持ちだろうか? 今回のブログの見出しは、ある医師に「先生はなぜ名刺を持たないのですか?」と尋ねたときに言われた言葉だ。

 名刺はビジネスパーソンにとっては必須アイテムだ。ビジネスは、名前を覚えてもらってナンボ、の世界。名刺交換は、初めて人に会ったときの重要な儀式だ。中には、顔写真、趣味や特技、個人の携帯番号、飼い犬の名前など、様々な情報を名刺に印刷するビジネスパーソンもいる。それだけ自分を印象づけることに必死なのだ。

 これまで私はたくさんの医師にお会いしたが、名刺を持っているのは3分の1くらい、残りは持っていない印象だ。院長や部長などの役職が付いている医師は、名刺を持っていることが多い。大学の医局からのローテーションの場合、名刺を作ってもすぐ異動となるので、作ることにためらいを持つ人もいるだろう。冒頭のように、肩書や病院名に縛られるのを嫌がるプロフェッショナル志向の人もいるだろう。

 医師は自分を積極的に営業する必要はないし、仕事を獲得することに躍起になることもない。担当する医薬情報担当者(MR)の名前などは、必要なときに自分から聞けば済む場合も多い。対外的な仕事がそれほどなければ、医師は名刺交換する機会自体がそれほど多くないのかもしれない。

 「名刺は病院が用意すべきだ」という意見も聞く。医療機関が全ての医師に名刺を配布する習慣はあまりない。私も勤務していた病院から名刺をもらった覚えは一度もない。たくさんの職員に配布するとコストがかかるからだろうか? ローテーションする医師に配布するとキリがないからだろうか? それとも、名刺を悪用されることを恐れるからだろうか……? 

 病院の方針もあるだろうが、医師を自院の有力な広告塔として考えるなら、積極的に名刺を配布してもよいのではないかと思う。その医師を頼って患者を紹介されたり、コンサルトの依頼が来たりする可能性もある。病院経営者が本当に地域密着の医療を提供したいなら、キーパーソンである医師に名刺を持ってもらい、積極的に地域との交流を図ってもらうことは、経営戦略上も重要ではないだろうか。

著者プロフィール

裴 英洙(ハイズ(株)代表取締役社長)●はい えいしゅ氏。1972年生まれ。金沢大学大学院医学研究科修了。外科医・病理医として勤務後、MBAを取得し2009年に起業。医業経営コンサルタントの仕事の傍ら、再建先で臨床医として医療現場に携わる。

連載の紹介

裴 英洙の「今のままでいいんですか?」
医療機関の経営問題を解決しないと、医師が意欲を持って働けない—。そんな危機感からMBAを取得し、コンサルティング会社を設立した異色キャリアの医師。これまでの経営支援の経験から、病医院で見過ごされがちな問題やエピソードを語ります。
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