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チーム医療を成功に導く「合宿」のススメ!

2013/05/15

 毎年4月に入ると、花見や歓迎会などで“一杯やる”機会が増える。医療機関の管理職が「飲み会をやろう」と言うと、中堅クラスから「今時の若い子たちは嫌がりますよ。飲み会で喜ぶのは、年配のおじさんだけです」と、たしなめられることも少なくない。

 だが、ウェブ版の飲食店検索サービスを手掛ける「ぐるなび」の調査によると、実は新社会人の7割が“飲みュニケーション”に期待しているという。同席者、それも普段接する機会が少ない人とのコミュニケーションを希望する声が多いそうだ。いつもは真剣に仕事をしている同僚のプライベートも少しくらい知っておきたいと思うのは、新人のみならず社会人であれば当然と言えば当然だろう。事実、上場企業を中心に、忘年会や運動会、社員旅行を復活させている例が増えている。

 一方、医療機関に目を向けると、「当院のコミュニケーションはバッチリです」と胸を張って言えるところは意外に少ない。「チーム医療」というキーワードが登場してから久しいが、逆に言えばチームで最適な医療を提供できないからこそ、こうした言葉がスローガンとして登場してくるのだろう。実際、医療現場ではコミュニケーションの悪化で「医師が威張りすぎる」「看護師が言うことを聞かない」「○○科の先生と△△科の先生の仲が悪いので、連携できずに困る」「医療クラークが電話をガチャ切りするのはけしからん」などの不満があふれ、大きな弊害を招いているケースもある。

 では「飲み会を企画すればコミュニケーションを深められるのか?」というと、そう単純ではない。飲み会は、固定的なイベント(忘年会や歓送迎会)以外の目的だとなかなか開きにくい。“非公式のイベント”なので、飲み代を経費として毎回計上するわけにいかないだろう。そもそも、飲み会を開けばすぐにスタッフ間の意思疎通が良くなり、労働生産性が上がるというわけでもない。コミュニケーションを活性化するのは意外に難しいのだ。

寝食を共にする体験が奏功
 当社が手掛けたある病院のプロジェクトでは、チーム医療の推進が課題になっていた。診療科が10以上にまたがるため、それぞれの意思決定プロセスが縦割りになってしまい、院内のコミュニケーションが急速に悪化していた。

 例えば、医療機器の買い替えのために数年に一度開かれる会議では、各々の診療科が購入したい機器を主張して譲らず、副院長はその折衝に数カ月もかかっていた。3億円の機器購入予算に対し、各診療科の要望を合計した額は実に30億円。結局、会議では何も意思決定できず、集まって意見交換するだけの場になってしまったため、メンバーの遅刻や欠席が相次ぐようになった。勤務後の夜20時に集合して22時に終わるのに、何1つ決まらない会議であれば、誰も参加したがらないのは当然だろう。

 このように閉塞した病院で「コミュニケーション活性化プロジェクト」を発足したわけだが、我々が病院側に提案したのは“合宿”だった。皆で缶詰めになって協働作業をする場を用意することで、会議では生まれない成果物を作ろうというのだ。当然、縦割り組織の壁を壊し、コミュニケーションを円滑にすることが最大の目的である。

 当初は「合宿を開催しても集まるメンバーは限られてしまう」と否定的に見ていた経営陣もいたが、実際に募集すると参加率は7割を超え、各科のトップと若手のエース級のほとんどが参加した。参加率アップに向けて、各医師のスケジュール調整や、看護師などの勤務シフト調整、合宿を勤務として認めてもらうための折衝、研修費用の確保など、丁寧に下準備を行った。

自己紹介に“意外性”と“共通性”を取り入れる
 合宿が始まると、職員同士のコミュニケーションは一気に活性化した。幾つかのグループに分けて院内の課題を議論し、それを発表して各々のアイデアを集約していくだけの単純な仕組みだが、意見交換は予想以上に盛り上がった。合宿の参加率アップ、コミュニケーション活性化のためのアイデアは、当社のノウハウなのであまり詳しくは書けないが、2つだけ例を出そう。

著者プロフィール

裴 英洙(ハイズ(株)代表取締役社長)●はい えいしゅ氏。1972年生まれ。金沢大学大学院医学研究科修了。外科医・病理医として勤務後、MBAを取得し2009年に起業。医業経営コンサルタントの仕事の傍ら、再建先で臨床医として医療現場に携わる。

連載の紹介

裴 英洙の「今のままでいいんですか?」
医療機関の経営問題を解決しないと、医師が意欲を持って働けない—。そんな危機感からMBAを取得し、コンサルティング会社を設立した異色キャリアの医師。これまでの経営支援の経験から、病医院で見過ごされがちな問題やエピソードを語ります。
裴英洙氏による書き下ろし!
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