埼玉県ふじみ野市で起きた医師殺人事件をニュースで聞いたとき、最初は「医療現場ではありがちなもめごとから生まれためちゃくちゃレアなケースだ」という認識を私は持っていましたので、とても痛ましいことだとは思いましたが、自分事としてとらえる感覚はありませんでした。しかし、その後自分のfacebook上でかなりの「ともだち」の医師(訪問診療を活発に行っている方々です)がこの事件に言及し、その多くが大きなショックを受けていました。こんなことはめったにないことなのですが、そういえば先月起きた大阪のクリニック放火殺人事件の時にもfacebookともだちの精神科医が複数人、大きなショックを受けていました。きっと、この2つの事件は、犯人というよりは、そのニュースを聞いた医師(精神科医と訪問診療医)にとって共通する「タダならぬ当事者感」があるのだと思います。つまり、この事件を知った多くの医師が「今回はたまたま自分じゃなかっただけ。明日は我が身」と感じたからでしょう。ニュースの内容詳細を聞いて、私も似たような感覚になってきました。この「明日は我が身」なリアリティはどこから来るのでしょうか?
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著者プロフィール
尾藤誠司氏(東京医療センター臨床研修科医長)●びとうせいじ氏。1990年岐阜大卒。国立長崎中央病院、UCLAなどを経て、2008年より現職。「もはやヒポクラテスではいられない 21世紀 新医師宣言プロジェクト」の中心メンバー。

連載の紹介
尾藤誠司の「ヒポクラテスによろしく」
医師のあり方を神に誓った「ヒポクラテスの誓い」。紀元前から今でも大切な規範として受け継がれていますが、現代日本の医療者にはそぐわない部分も多々あります。尾藤氏が、医師と患者の新しい関係、次代の医師像などについて提言します。
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