日経メディカルのロゴ画像

いまだに白衣の着方が分かりません

2012/08/28
尾藤誠司

 先日の“医者はなぜお互いを「先生」と呼ぶのか?”については大変たくさんのフィードバックをいただき感激でした(記事はこちらから)。この場を借りて感謝いたします。また、こちらの私が参画しているプロジェクトのサイトでも、この話題について「いやこれはおかしいだろ!」とか「今の世代はもっと先に行ってるよー」などのご意見をいただけるとさらにうれしいです。

○「もはやヒポクラテスではいられない」21世紀 医師宣言プロジェクト
http://www.ishisengen.net/index.html

 さて今回は、白衣についてお話ししたいと思います。私は医師免許を得て、かれこれ23年目になるのですが、実はいまだに白衣を「いつ、どのように」着るべきかに迷っていて、白衣を着たり着なかったりの毎日です。

 なぜ白衣のTPOについて悩んでいるかというと、白衣を着るということに対する「合理的な理由づけ」をすることが、いまだにできないからです。ちなみに、私はルールには基本的に従う人間なので、「当院の医師のユニフォームはこれである。おまえは職員なので、このユニフォームを着なければならない」ということであれば、私はその命令に従順に従うと思います。

 しかしながら、医療専門職、特に医師にとって白衣は、「各施設に付帯するユニフォーム」という位置付けではないように感じます(一部を除いて)。みんなそれぞれ色々なデザインの白衣を着ていますし、必ずしも病院から支給されたものを着ているわけでもなさそうです。一方では、理学療法士や薬剤師なども含め、医師を含めたほとんどの医療専門職は、日常業務を行う上で当たり前のように白衣を着ています。ですから、「白衣=ユニフォーム」ということ以外に、何かしらの意味を持っているようです。

白衣を着る、一般的な理由
 ではここで、白衣を着用する意味について一度整理してみましょう。白衣を着る職業人は何も医療専門職だけではありません。料理人や理容師、エステティシャン、理科の先生など、色々な職業の人が白衣を着て仕事をしています。おそらく、これらすべての専門職が白衣着る理由は「作業に必要だから」ということでしょう。より具体的には、

【理由1】自分を(汚れや感染症等から)ガードするため
【理由2】仕事環境で曝露する特殊な薬品や細菌等を、他の場所や日常に持ち込まないようにするため


という感じかと思います。理由2の合理性が、現在の医療現場で破綻していることはおそらく明確で、その破綻のおかしさについては今回記述しません。

 しかしながら、理由1+2によって医療専門職が白衣を着ることの正当性があるとして、医師として仕事をする際に常に白衣を着ることに対し、私はやはりモヤモヤしています。もし、上記の理由であれば、特殊な状況を除き、「外来で白衣を着る理由」を、私はなかなか見い出せません。

 合理的な理由を見出すことができないだけならば、「医療専門職は慣習として白衣を着ることになっている」という理屈に従おうと思います。しかし白衣が、患者さんとの関係性を作る上で、少なくとも私にとっては具合が悪いと感じてしまうことがあるため、理屈に従わず毎日悶々としているわけです。

プロの着る制服に緊張する
 私の感じる具合の悪さは、「制服を着た警察官」や「迷彩服を着た兵隊さん」に近いものでしょう。迷彩柄のズボンをはいたお兄ちゃんの前では緊張しませんが、迷彩服を着た自衛隊の人の前ではかなり緊張します。この緊張は(無理やりかもしれませんが)プロフェッショナルと社会契約によって結ばれている市民の間にある、信頼の証かもしれません。

連載の紹介

尾藤誠司の「ヒポクラテスによろしく」
医師のあり方を神に誓った「ヒポクラテスの誓い」。紀元前から今でも大切な規範として受け継がれていますが、現代日本の医療者にはそぐわない部分も多々あります。尾藤氏が、医師と患者の新しい関係、次代の医師像などについて提言します。

この記事を読んでいる人におすすめ