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虎、医療崩壊の先にある究極の医療崩壊を案じる

2020/12/16

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断・治療で従事している医療関係者の皆様、本当にご苦労さまです。東病院では、相談室に「コロナ差別分野」を設け、職員やその家族がどんなささいな差別を受けた場合でも相談できる窓口を作った。今のところ大きな問題は起きていないが、もしそうした被害の報告があれば、法人として、社会的・法的措置に出る方針だ。

 医療関係者のほとんどは、GoToキャンペーンには参加していない。私としては、もし政府が医療関係者に感謝をしているなら、本当の意味での感染収束後に「医療関係者向けGoToキャンペーン」を行ってほしいところだ。

 ところで最近、テレビや新聞で「医療崩壊」という言葉を毎日見聞きするようになった。しかし、その言葉を聞くたび、一般市民は本当に医療崩壊の意味するところを分かっているのだろうかと首をかしげてしまう。

 一般的に医療崩壊は、「必要な医療」が「提供できる医療」を超えてしまうということだ。分かりやすく言えば、「救急車の受け入れ拒否」もある意味で医療崩壊の一端ということになる。毎日、東病院には、他病院が受け入れ拒否した患者さんが救急搬送されてくるが、毎晩この地域では、小さな医療崩壊が起こっているということになる。今、目の前に迫っている医療崩壊について、そろそろ一般市民も実感を持って知るべき時ではないかと思っている。

 コロナ禍になり、私の生活も大きく変わった。今年はクリスマスも正月もないだろう。接待を伴う飲食店にも長く顔を出していない。夜は、たまに行きつけの店でちょっと飲んで終わりというわびしいものになった。その結果増えたのが、仕方なく家でAmazon Prime Videoを見る時間だ。

 先日、昔の映画を探していたら、2009年に公開された「感染列島」を見つけた。ストーリーは大体覚えていたのだが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックと類似しているところもあり、改めて興味深かった。しかし、私にとって最も興味深かったのは、映画の内容よりも、「感染列島」を見た視聴者がインターネットに書き込んだレビューやコメントだ。

 「救急隊がマスクをしてない」「感染症病棟に面会者が入っている」など、コロナ禍前にはあり得なかったツッコミが溢れているではないか。

 これらのレビューやコメントは、おそらく医療関係者が書いたものではないのだろう。正直、ドラマにしろ、映画にしろ、医療現場を知っている人間ならば、ツッコミどころのない作品なんて、今まで一度も見たことがない。ドラマや映画を信じるなら、妻夫木聡や檀れいが医師として普通に勤務している夢のような病院があるはずである。

著者プロフィール

東謙二(医療法人東陽会・東病院理事長兼院長)●あずま けんじ氏。1993年久留米大卒。94年熊本大学医学部第2外科。熊本地域医療センター外科などを経て、2000年東病院副院長。03年より現職。

連載の紹介

東謙二の「“虎”の病院経営日記」
急性期の大病院がひしめく熊本市で、63床の病院を経営する東謙二氏。熊本市の若手開業医たちのリーダー的存在でもある東氏が、病院経営や医師仲間たちとの交流などについて、ざっくばらんに語ります。
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『“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営のススメ』
好評発売中

 本連載、「東謙二の“虎”の病院経営日記」が1冊の本になりました。約10年間の掲載からよりぬきの回を「病院経営」「連携・救急」「医療の話」「ひと・酒」の4テーマに分け収録。書き下ろし「中小病院が生き残るための15箇条」の章は、「敵対より連携」「コバンザメ医療経営のススメ」「中小病院の生きる道」「2代目は本当にだめか」「同族経営と事業承継」……など、民間医療機関の経営者には必読の内容となっています。
(東謙二著、日経メディカル開発、2700円+税)

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