日経メディカルのロゴ画像

虎、人生の兄貴である“直接×本音”の人と…

2014/12/26
東謙二

 毎年、年末はイベント漬けだ。忘年会からクリスマス、カウントダウンパーティーまで、それなりに盛り上がるものの、寒さのせいか、日が短いせいか、なんとなく物悲しい。私が思うに、そもそも年末はなんとなく寂しい季節なので、無理やり楽しみを増やすべく、イベントが広がったのではないかと勘繰っている。

お世話になった方々が続々定年に…
 実際、今年の私の年末は特に寂しい。私が“人生の兄貴”と慕う矢野経済研究所の遠藤邦夫氏が、2014年度で定年を迎えるからだ。私が50歳近くになるので諸先輩方が還暦で定年となるのも仕方ないが、今までお世話になった元アトルの室栄二氏をはじめ、私の生き方に指針を与えてくださった方々が、続々定年を迎えている。

 このブログの読者ならご存知だと思うが、遠藤氏の凄いところは、なんと言っても人脈の広さだ。私の知る限りでも、厚生労働省の役人から医大の学長、大学教授、大病院院長、開業医まで、1人ひとり挙げるときりがない。そして自身の好き嫌いに関わらず、それらの人々と常にとことん話をする。時には喧嘩し、時には飲みまくって人脈を広げてきたらしい。

 そのせいか、遠藤氏の話を伺っているときにいつも感じることがある。机上の空論が全く感じられないのだ。実際現場に行って、現場の人間と話し、自分の意見をぶつけて実態を見抜く手法は、まさに尊敬に値する。もちろん本人が、それを手法と意識しているのか、元来持ち合わせているキャラクターで実態をあぶり出しているのか、私には知る由もないが。ご多分に漏れず、私もその手法にまんまとハマったわけである。遠藤氏と飲むときは、常に本音でしか話さない。まさに“直接×本音”の人である。

 正直最近は、メディアなどの取材でも、インターネットでメールすれば大抵のことは済んでしまう。ただその場合、直接担当者に会わずにメールで医療現場などについて医師の本音を漏らそうものなら、一般の人から批判を浴びて、一気に大炎上である。というわけで、“間接×建前”で、無難な言葉を選ぶのが常だ。きっと医師であれば、少なからず経験されたことがあるだろう。インターネットを通じて、一定の距離を保つ感覚は、きっと現代人特有のものなのだろう。そうした現代人を、真っ向から否定し、“直接×本音”で勝負してきた人物が、遠藤氏だと言える。

 医療の世界は、知れば知るほど、改革の難しい現場だ。職種が何であれ、現場に理解がある専門家は、テレビに出てくる医療ジャーナリストのような一方向だけに偏った主張は絶対にしない。遠藤氏はまさに、現場を知り尽くしてきた専門家。その遠藤氏が定年を迎える今、現場の核心にせまる次代の専門家が出てくることを期待してやまない。

 かくいう私は、寂しさを紛らわすべく、特別な忘年会を計画した。開催地に選んだのは、東京でも熊本でもなく、新潟。そんなに遠くではなく、温泉宿で一泊できるところを探していたところ、ある人物を思いついた。それは、人一倍大きな体で豪快に笑う、新潟の調剤薬局エム・スタッフ社長の名畑茂昭氏である。白い髭さえ蓄えれば、一瞬にしてサンタクロースに変身できる人物だ。おっさん3人であれば、温泉宿に行っても変な目で見られまい。

著者プロフィール

東謙二(医療法人東陽会・東病院理事長兼院長)●あずま けんじ氏。1993年久留米大卒。94年熊本大学医学部第2外科。熊本地域医療センター外科などを経て、2000年東病院副院長。03年より現職。

連載の紹介

東謙二の「“虎”の病院経営日記」
急性期の大病院がひしめく熊本市で、63床の病院を経営する東謙二氏。熊本市の若手開業医たちのリーダー的存在でもある東氏が、病院経営や医師仲間たちとの交流などについて、ざっくばらんに語ります。
この連載が本になりました!
『“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営のススメ』
好評発売中

 本連載、「東謙二の“虎”の病院経営日記」が1冊の本になりました。約10年間の掲載からよりぬきの回を「病院経営」「連携・救急」「医療の話」「ひと・酒」の4テーマに分け収録。書き下ろし「中小病院が生き残るための15箇条」の章は、「敵対より連携」「コバンザメ医療経営のススメ」「中小病院の生きる道」「2代目は本当にだめか」「同族経営と事業承継」……など、民間医療機関の経営者には必読の内容となっています。
(東謙二著、日経メディカル開発、2700円+税)

この記事を読んでいる人におすすめ