日経メディカルのロゴ画像

虎、東京の講演会で演者になる

2014/07/28

 先月末、度重なるゲリラ豪雨や、突然大量の雹(ひょう)に見舞われていた関東地方。いつもなら、東京の異常気象のニュースは遠い国の話なのだが、今日は違う。日経ヘルスケアが主催する「院長予備校」の講師を務めるため、東京に向かっているからだ。不謹慎ながら、東京に着いたらドデカい雹が頭に落ちてくれればいいのにと思いつつ、私は羽田空港に降り立った。

東京での移動に強力な武器を投入
 院長予備校とはその名の通り、医療機関の院長を対象とした単発の勉強会だ。6回目の開催で、今回のテーマは「二代目院長の苦悩と経営戦略」。これまでの講師は、カルビーの会長兼CEOやローソンの前社長兼CEOなど錚々たる顔ぶれ。出席者も、北は北海道から南は沖縄県まで全国津々浦々の先生が参加する勉強会だという。引き受けたはいいものの、私のような田舎の医師が何を話せばいいのか、今日までかなり悩んだ(関連記事)。

 出発時、熊本は晴天で、東京は曇り。ただ、ゲリラ豪雨は降る気配もない。ドデカい雹が頭に落ちることもなさそうだ。そんなことを考えつつ、モノレールに揺られて浜松町に到着した。

 私にとって、勝負はここからである。院長予備校が開催される御茶ノ水まで行かなければいけない。都会人には理解不能だろうが、地方から来た者にとって、山手線内の内側での移動はかなりやっかいなのだ。無数の駅が描かれた路線図を見ても、どのルートを選択すればいいのか、さっぱり分からない。

 しかし今日は、とっておきの武器を仕込んできた。スマートフォンの「乗換ナビ」なるアプリである。「出発駅」と「到着駅」に駅名を入れると、最適ルートが瞬時に表示される。「浜松町」と「御茶ノ水」を入力し、最短ルートが示された。さっそくSuicaを購入して、アプリの指示通りに乗り換え、ちょっとした都会人の気分を味わった。さらにこのアプリが優れているポイントは、何両目に乗ったらいいのかまで教えてくれることだ。指定された通りの車両に乗れば、降りた時にはエスカレーターか階段がちょうど目の前に来る。かなりの時間節約効果と疲労防止効果が得られるのだ。

 そうこうしてお茶の水に到着した。駅を出ると目前に、会場であるソラシティプラザの高いビルがそびえ立っていた。熊本にはこんな高いビルはない。綺麗で大きなエントランス。否応なしに緊張が高まった。

飛び抜けて異色な旧友との再会
 受付後、講師待合室に通された。そこには日経ヘルスケア編集長の村松謙一氏が待っており、数時間後カラオケで弾けている姿がウソのように丁重にご挨拶頂いた。遅れて、今日一緒に講演する医療法人カメリア理事長の長岡和氏が入ってきた。長岡氏は同じ久留米大学医学部の同期。彼は普段、苦虫を噛み潰したかのような仮面のような顔をしているが、久しぶりの私との再会で自然と笑顔がこぼれた。私も、旧友との再会で緊張の糸はどこかへ吹っ飛んでしまった。しばらく昔話に花が咲いた。

 いざ本番。長岡氏の演題は「異色精神科医が挑んだ病院づくりと地域づくり」だ。ありえないほどの長い時間をかけて患者に向き合う精神科医には、結構異色な医師が多い。しかし、その精神科医の中にあっても、私の旧友である長岡氏は学生時代から飛びぬけていた。

著者プロフィール

東謙二(医療法人東陽会・東病院理事長兼院長)●あずま けんじ氏。1993年久留米大卒。94年熊本大学医学部第2外科。熊本地域医療センター外科などを経て、2000年東病院副院長。03年より現職。

連載の紹介

東謙二の「“虎”の病院経営日記」
急性期の大病院がひしめく熊本市で、63床の病院を経営する東謙二氏。熊本市の若手開業医たちのリーダー的存在でもある東氏が、病院経営や医師仲間たちとの交流などについて、ざっくばらんに語ります。
この連載が本になりました!
『“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営のススメ』
好評発売中

 本連載、「東謙二の“虎”の病院経営日記」が1冊の本になりました。約10年間の掲載からよりぬきの回を「病院経営」「連携・救急」「医療の話」「ひと・酒」の4テーマに分け収録。書き下ろし「中小病院が生き残るための15箇条」の章は、「敵対より連携」「コバンザメ医療経営のススメ」「中小病院の生きる道」「2代目は本当にだめか」「同族経営と事業承継」……など、民間医療機関の経営者には必読の内容となっています。
(東謙二著、日経メディカル開発、2700円+税)

この記事を読んでいる人におすすめ