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私が飛行機とヘリの免許を持っている理由

2008/10/07

 8月に終了した日経メディカル オンラインの内山伸先生のブログ「ハーバード留学日記」を楽しく読ませていただきました。読みながら、とても羨ましく思いました。私は大学医局時代も酒を大量に飲む以外の才能はありませんでしたので、教授から海外留学のお声はかからず、九州各地の病院の救急部門で働きづめだったからです。

 海外留学の経験のない私でも、実は医学以外での“留学”ならあります。高校卒業後、パイロットになるためにアメリカへ行き、しばらく現地滞在をしたのです。そして、20歳の時、飛行機(一般にいうセスナ)の免許とヘリコプターの免許を取得しました。色んな人から「どうして小型軽免許を取ったのか」と尋ねられることが多いのですが、いつも面倒臭いので病院が航空身体検査をしているから…と適当に答えています。しかし、本当の理由は私の親父・東謙一にあります。

 親父の趣味は、いやいや趣味以上かも知れませんが、飛行機です。そして彼は、俗にいう“飛行機野郎”です。少年時代、陸軍幼年学校に入学、陸軍航空隊の入隊を目指しているときに終戦を迎えました。医者になってからも大空への情熱は失せることなく、小型機のパイロットとなり、さらに、仕事として空を飛ぶことができる事業用免許、パイロットを育成することができる教官免許まで取得しました。もう、取得する免許がなくなったと思ったら、次は複数のエンジンを持つ双発機、水上飛行機の資格まで取りました。さらに、診療の合間にも飛行機のプロペラ、計器などの部品を見るために病院の横に私設の航空医学研究所をつくり、パイロットの航空身体検査を始めました。研究所の屋上には本物の飛行機を置くという"エンスー"ぶりです。そしてついには、仲良しの航空大学校の土屋正興教授(当時)と共に『航空医学と安全』という本まで出版ました。(編集部注:同書の改訂版が『航空医学』という書名に変更されて、鳳文書林出版販売から今年7月に出版されています)。

 親父は、私に高校時代から飛行機乗りの訓練を始めました。晴れた日曜日には「よし、今日は視界がいい。飛行機日和だ。謙二、行くぞ!」と熊本空港に“連行”されました。当時私は高校のホッケー部のキャプテンをしていましたが、試合があっても飛行機の訓練に連れて行かれたので、部員たちには迷惑をかけていました。「試合に来たり来なかったりする気まぐれ主将」と他の高校のチームからは思われていました。私も飛行機に乗ること自体は楽しかったのですが、コクピットで息子そっちのけで過剰に楽しんで操縦している親父を見ると、ちょっと冷めてしまいがちでした。

 そんな私が飛行機の免許を取るきっかけとなったのは医学部受験の失敗でした。しょんぼりしている私に親父は、「医学部に落ちるなんてつまらんやつだなー。どうせ暇なんだから、アメリカに行って、飛行機の免許でも取って来い!」と言い、ぽんと渡航費と免許費用を出してくれました。

 そういった経過で、パスポートを取って、単身アメリカに向いました。まずロサンゼルス国際空港の入国審査でつまずきました。なんせ無職の上に宿泊先も決まっていなかったため、不審者として空港からロサンゼルス警察に身柄引き渡しとなりました。色々調べられて、結局、訳がわからないまま航空留学生という身分になって無事釈放されました。それから、「モーテル6」という宿に向かいました。マンスリーで借りることを受付で伝えると、いかつい黒人スタッフから、「なんだこの小僧」といった感じでにらまれたこと覚えています。


著者プロフィール

東謙二(医療法人東陽会・東病院理事長兼院長)●あずま けんじ氏。1993年久留米大卒。94年熊本大学医学部第2外科。熊本地域医療センター外科などを経て、2000年東病院副院長。03年より現職。

連載の紹介

東謙二の「“虎”の病院経営日記」
急性期の大病院がひしめく熊本市で、63床の病院を経営する東謙二氏。熊本市の若手開業医たちのリーダー的存在でもある東氏が、病院経営や医師仲間たちとの交流などについて、ざっくばらんに語ります。
この連載が本になりました!
『“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営のススメ』
好評発売中

 本連載、「東謙二の“虎”の病院経営日記」が1冊の本になりました。約10年間の掲載からよりぬきの回を「病院経営」「連携・救急」「医療の話」「ひと・酒」の4テーマに分け収録。書き下ろし「中小病院が生き残るための15箇条」の章は、「敵対より連携」「コバンザメ医療経営のススメ」「中小病院の生きる道」「2代目は本当にだめか」「同族経営と事業承継」……など、民間医療機関の経営者には必読の内容となっています。
(東謙二著、日経メディカル開発、2700円+税)

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