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[CASE02]
やり場のない痛みを癒やした、ある医師の言葉

2020/01/29
川上加奈子(よつば訪問看護リハビリステーション 看護主任)

【困難事例2】「“誰からも見放されてしまった”という、やり場のない痛み」があるケース

 64歳女性Bさん。59歳のとき、自動車事故で頸髄(C3.4)を損傷し緊急入院。
 車椅子生活になると同時に嚥下機能も不完全となり、退院後も誤嚥を繰り返していた。
 長年の車椅子生活と誤嚥性肺炎を繰り返すことで栄養状態と免疫力が落ちてきたためか、仙骨部と左踵に褥瘡を形成。
 褥瘡の発症とともに下肢のしびれや痛みが出現し、痛みの原因を探るべく再度入院へ。

 検査の結果は異常なしとのことで、内服の変更とボトックス治療を試みることに。
 しかし、痛みは全く軽減されず。さらに痛みを抑える内服薬が増量となり、傾眠がちで食事量も低下し体重も減少(10キロ減)した。
 半覚醒での食事摂取による誤嚥リスクの増加とともにストレスが増大し、本人の強い希望で退院となった。

 入院中に褥瘡は治癒したものの、下肢の痛みと痙性は改せず悪化。特に夜間に痛みが強く、1時間ごとの体位交換と4時間ごとのロキソニン内服で、本人も家族も限界の状況。そんななか、再び誤嚥性肺炎を発症。
 往診医もよつばスタッフも入院を勧めたが、家族より「肺炎より、痛みをなんとかしてほしい。どこの病院に行っても、『あの有名な専門病院で痛みのコントロールができないなら、うちでは無理ですから』と断られてしまい、もうどこに救いを求めたらいいのかわからない」と訴えがあり、入院を拒否。

 「殺してほしい」「脚が焼けるように熱い、痛い!」と訴え続けるBさんの状況に、よつばスタッフもじっとしてはいられず、地域のペインクリニックを調べ、利用者情報を送り、受け入れ先を必死で探した。この結果、「ブロック注射を試してみましょうか」というクリニックがみつかった。

 Bさんによれば、初診時にクリニックの院長から、「今まで本当に大変でしたね。一緒に痛みをコントロールできないか考えていきましょう」とはじめて言われたのこと。
 その後も、処方薬に大きな効果はみられず、試行錯誤を繰り返してはいるが、クリニック受診の日だけはBさんは「ぐっすり眠れる」とのこと。
 このクリニックの院長に出会えたことで、Bさんは心をやっと開いたのであった。

連載の紹介

カンファで解決!訪問看護の困難事例
よつば訪問看護リハビリステーション(横浜市瀬谷区)が行っている事例検討会を通して、訪問看護の現場で起こる様々な困難事例の解決方法を考えていきましょう。看護師の学び・仕事に役立つサイト「ナース専科plus」の協力でお届けします。
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