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病棟配置の退院支援ナースが求められるワケ

2017/03/03
宇都宮宏子(在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス)

© 2012 Osada Keiko

 私は、訪問看護師、大学病院での退院調整看護師を経て、2012年から退院支援に関する講演や研修などで全国を飛び回っています。

 その活動は、退院支援や在宅療養移行支援についての(1)講演会、(2)研修・セミナー、(3)市町村の在宅医療介護連携事業に関連した研修・事業アドバイザー、(4)病院の退院支援研修・アドバイザー、(5)研究会活動、(6)看護大学での講義・研修事業など、多岐に渡っています。

 特に2016年度は、「病院の退院支援研修・アドバイザー」の依頼に積極的に対応した1年となりました。2016年度診療報酬改定において、退院支援を強化するために退院支援業務に従事する職員の病棟配置を高く評価した「退院支援加算1」が創設された影響が大きかったと思われます。

 研修会や、看護部内の退院支援システムを構築するためのアドバイザーのご依頼をいただくと、私は、看護管理者の方に次のようなことをお願いしてサポートを始めます。これらの項目は、自施設で退院支援のための体制を整備する際のヒントになると思います。

退院支援システムをつくる前にすべきこと

(1)退院支援・退院調整の現状を把握しよう
院内には、地域連携室や医療福祉相談室など、これまでに退院相談に対応していた部署があるはずです。院内で孤軍奮闘してきた医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)や退院支援看護師に、院内の退院に関する課題をヒアリングしてみましょう。
 
 中には看護部への期待から、あれやこれやと訴える退院支援看護師やMSWもいると思いますが、まずはじっくりと話を聴いてみてください。

 次に、看護管理者として、前回の連載で紹介した「退院支援・退院調整の3段階プロセス」として、(1)退院支援が必要になる患者の把握、(2)受容・自立支援、(3)サービス調整(退院調整)――をイメージして、現在の外来・病棟・退院調整部門で「できている強み」と「不足している弱み」を整理してみましょう。

(2)退院支援が必要となる対象患者を把握しよう
 それぞれ病院の機能によって、患者の特徴があると思います。まず病棟ごとの高齢者(75歳以上)の占める割合はどのくらいでしょうか。診療科(疾患・病態)によって在宅に移行するためのマネジメントの手法も異なることから、患者の特徴をつかみ、システム構築やスタッフ教育に反映させましょう。

 例えば、整形外科や脳外科といった病棟では、骨折や脳血管障害によってADLが低下している患者が多く、退院支援では主に暮らし方の再構築を行うことになります。がん患者が多い病棟では、ADLの問題よりも、医療上の課題が継続して起こることが多く、緩和ケアが欠かせません。また、がんのステージによっては、「最期をどこでどう迎えるか」といった課題に対して患者の自己決定を支援する取り組みも重要になります。肺炎や心不全を繰り返す高齢者が多い病棟では、入院環境下で「暮らしを取り戻す視点」を持ちながら、高齢者のエンド・オブ・ライフケアへの支援が必要になってきます。

 次に、緊急入院と計画(予定)入院の割合はどうでしょうか。緊急入院の場合、かかりつけ医によってそれまでの治療の進め方や退院支援へのかかわり方が異なるため、退院支援を行う際の課題が多くハイリスクといえます。まずは、かかりつけ医がどこの医療機関なのかを確認し、治療方針も含めて、かかりつけ医と連携することが大切です。また、介護施設など自宅以外の住まいからの緊急入院が多い場合は、いわゆる人生の最終段階での医療のあり方や看取りの支援などについて、施設側のナースも巻き込んで検討すべきです。

 緊急入院のケースは退院支援を行うに当たってリスクは多いですが、自分の所属する病院の外来通院患者への在宅療養支援のあり方や介護施設との連携の方法などを見直し、検討することができるよい機会にもなります。

(3)在宅支援側からの現状を聞こう  
 自分の所属する病院の法人内で在宅事業を展開している場合などは、訪問看護事業所や居宅介護支援事業所の職員から、院内の退院支援や外来での在宅療養支援がどう見えているか、現状を聞きましょう。

 「胃が痛くなる話」も、たくさん聞こえてくるでしょう。でも、まずは地域から見える院内の問題を洗い出して、(1)早急に自院で解決できること、(2)地域と協働で取り組むこと、(3)住民への発信や合意形成が必要なこと――の3つに整理して、解決に向けた戦略を立てます。

著者プロフィール

宇都宮宏子◎うつのみやひろこ氏。1980年京都大学医療技術短期大学部看護学科卒業。看護師を経て訪問看護師に。2002年より京都大学附属病院退院調整看護師。2012年在宅ケア移行支援研究所を設立し、コンサルテーション活動などを行う。著書に『退院支援実践ナビ』『これからの退院支援・退院調整』『退院支援ガイドブック』ほか。

連載の紹介

宇都宮宏子の「退院支援」活動日誌
日本の退院支援・在宅療養移行支援のパイオニアである筆者の活動日誌。「退院支援の伝道師」として全国を駆け回る著者が、行く先々で出会った仲間たちの声とともに、日本の退院支援のいまとこれからを伝えるエッセイ風コラム。退院支援にかかわるあらゆる医療者に向けて、筆者が今感じていること、退院支援の課題ややりがい、読者に伝えたい熱い応援メッセージをお届けします。

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