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訪問看護界の“非常識”? LEが正社員採用にこだわるワケ

2014/05/26
多江和晃(Life On Vital Element 代表取締役)

 常勤、非常勤など色々な働き方ができることは、世の中にとって、訪問看護事業所にとって、そして働く側にとっていいこともある。しかし、訪問看護業界の発展をまじめに考えた時、果たして本当にそうだろうか??

 LEは、全社員のうち正社員が9.5割を占める。週3日勤務の非常勤職員は、70人中3人しかいない。会社の利益だけを考えれば、正社員よりも、社会保険料などの負担のない非常勤の割合を多くした方がいいというのは、同業者が昔からよく口にすることだ。中には、一見、正社員の待遇を良く見せているが、実は非常勤の方が歩合制で稼ぎが多くなるような雇用システムの事業所もあると聞く。その方が、結果的にだれも正社員にならないので、退職金などを払わずに済む。よく考え付いたものだ。

 LEの体制は、これらの事業所とは正反対だ。私は、正社員に一生懸命働いてもらい、さらに会社のことも考えてもらい、正社員と苦楽を共にするのが一番だと考えている。また、当社は「土日祝日も含め、24時間いつでも対応する」を経営理念として掲げている。利用者の体調はいつ何時急変するか分からないし、その時、首尾よく在宅医や救急車が駆け付け適切に対応できるとは限らない。訪問看護師による専門処置によって救える命はたくさんあるからだ。そうした体制を構築するため、正社員採用にこだわっているという事情もある。

 ただ、お恥ずかしい話だが、私と職員がこうした信念を半ば“意地”で貫いている一方で、正社員の採用を巡っては、これまで求職者に何度も裏切られてきた。「内定を出したのに応募者から連絡がない」「応募者の留守番電話にメッセージを残したが再度連絡がない」。こんなことは年に数回はある。また、5年前、LEの職員を対象に「知り合いの看護師を紹介してくれたらおいしいディナーをプレゼント」という企画を考え、紹介者の職員とその友人の看護師に合わせて4万円近くのディナーをご馳走したところ、その1週間後に紹介者である職員自身が辞めてしまったこともあった。ホント、泣けてくるエピソード満載である。

 専門職の場合、全国どこでも就職できてしまうので、「アルバイト感覚か!」と怒鳴りたくなるようなノリで就職する者もいるし、正社員であっても簡単に退職する。そんな人は、企業が正社員を雇うのにどれだけ投資しているか知る由もないし、考えてもいないだろう。私自身も看護師であるため恥ずかしいし、そういう看護師を見るにつけ、「覚えておけよ!看護師!いつか痛い目を見させてやる!」と心の中で叫んでいる(笑)。それでも、私は専門職の可能性を信じているし、「人の役に立ちたいという思いが必ずあって、医療職に就いている」と信じたい。

著者プロフィール

多江和晃氏(Life On Vital Element代表取締役)●たえ かずあき氏。福井赤十字看護専門学校卒業後、福井赤十字病院、順天堂大附属順天堂医院などを経て、2007年に起業。現在、都内城南地区を中心に訪問看護事業所8拠点、居宅介護支援事業所等、計11拠点を運営し、14年にフィリピン支社開設。

連載の紹介

多江和晃の「失敗しない!?訪問看護ステーションの創り方」
「最期まで在宅で暮らせる環境を提供したい」ー。そんな思いから土日祝日も運営することをモットーに訪問看護ステーションを立ち上げ、事業拡大を進めてきた多江氏。「人こそすべて」と語る敏腕経営者が、人材マネジメントのノウハウを、自身の“失敗談”も交えて綴ります。

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