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ショック!部下が水面下で独立していた

2014/04/07
多江和晃(Life On Vital Element 代表取締役)

 独立開業したい人間の気持ちは、よく理解しているつもりだ。しかし、私には苦い経験がある。最も信頼していた部下の独立だ。私に内緒で、しかも近所で……。当時は防ぐ術がなかった。二度とあってほしくない忌まわしいできごとだが、今回は自戒の念を込めて書いてみたい。

 今から4年くらい前の話だ。当時、週1回、日曜日だけ当社(LE)にアルバイトに来ていた看護師がいた。私が以前勤めていた職場の後輩で、最も信頼していた人物だ。いずれ正社員としてLEに入社してもらうつもりでいたし、一緒に会社を大きくしていきたいと思っていた。

 ところがある日、その看護師が退職したいと申し出てきた。説得したが、「正職員として勤めている病院の人事異動で、日曜日に働けなくなった」と言われ、引き止められなかった。それからわずか半年後、その後輩がLE の近所で訪問看護ステーションを開設したことが発覚した。

 当時、当社には夫婦で働いているセラピストがいたのだが、ある時、夫の方がLEで担当していた利用者を抱えたまま、近所の訪問看護事業所に転職することが明らかになり、そしてその事業所の所長が、なんと退職したあの後輩だと分かったのである。私は絶句した。後輩はLE在職中から水面下で着々とエリアをリサーチし、LEの職員に「将来、独立する時、応援するよ」と甘い声をかけ、開業準備を進めていたのである。さらに、妻の方もその事業所で働いていることまで発覚した。

 当然のことながら、スタッフの退職・転職・独立が経営に及ぼす影響は大きい。また、地域戦略をしている以上、近くで独立されることは大きなリスクになりかねない。当社は実質、職員2人と利用者4人を奪われたことになり、その経営的ダメージを考えると、冷静ではいられなかった。私の代表としての人格や言動が、後輩を独立に駆り立てた諸悪の根源なのだろう。コミュニケーションが十分でなく、どこかで恨みを持たれていたのかもしれない。

 (ちなみに、甘い声をかけられたセラピスト夫婦は、3年経った現在も独立していない。独立を志すなら、その後輩を頼らずとも方法はいくらでもある。まだ若かったから後輩の口車に乗せられたのだろうが、こういうところからも専門職がいかに世間知らずかが、伺えてしまう。)

著者プロフィール

多江和晃氏(Life On Vital Element代表取締役)●たえ かずあき氏。福井赤十字看護専門学校卒業後、福井赤十字病院、順天堂大附属順天堂医院などを経て、2007年に起業。現在、都内城南地区を中心に訪問看護事業所8拠点、居宅介護支援事業所等、計11拠点を運営し、14年にフィリピン支社開設。

連載の紹介

多江和晃の「失敗しない!?訪問看護ステーションの創り方」
「最期まで在宅で暮らせる環境を提供したい」ー。そんな思いから土日祝日も運営することをモットーに訪問看護ステーションを立ち上げ、事業拡大を進めてきた多江氏。「人こそすべて」と語る敏腕経営者が、人材マネジメントのノウハウを、自身の“失敗談”も交えて綴ります。

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