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悩ましい、人材紹介会社との付き合い方

2014/02/14
多江和晃(Life On Vital Element代表取締役)

 1月6日の朝日新聞一面にも掲載されていたが、慢性的な看護師不足が続く中、「看護師紹介ビジネス」が広がっている。同紙によれば、就職や転職する看護師の4人に1人が人材紹介会社を利用しており、紹介料は看護師の年収の15~25%程度。約100万円が相場で、全国の病院が紹介業者に支払っている紹介料は、年間約250億円にも上る。看護師を金券で勧誘したり、転職をしつこく促す業者も現れるなど、競争は過熱しているという。

 紹介料が無料の看護師紹介事業として、都道府県看護協会が運営するナースプラザがあるが、求職者は若年層を中心に有料の職業紹介事業所に確実に流れており、紹介実績は右肩下がりだ。業を煮やした私は1年半ほど前、新宿区にある東京都ナースプラザを直接尋ね、「知り合いのIT企業の社長を紹介するから、魅力あるサイトに作り替えましょう」と提案してみた。だが、「そもそも人が集まらず潰れるような事業所は、最初から潰れるところよ」「税金でやっているからね」とけんもほろろな応対だった。12年度の紹介実績がピーク時の半分以下にまで落ち込んでいるというのに、何も手を打とうとしない姿勢に、正直あきれてしまった。厚生労働省がナースセンターの機能を強化する方針を打ち出したと聞き、ほっとしているところだ。

 ナースプラザがこんな状況なので、医療・介護系企業は人材紹介会社を頼らないと人が集められない。これほどまでにインターネットを駆使し看護師の就職・転職市場を席巻されてしまうと、上手に付き合うほかないというのが現状だ。かくいう当社も50社以上活用している。事業規模拡大中のステーションほど、彼らにお世話になっているのではないだろうか。

「嫌なら辞めればいい」がまん延
 医療機関や医療・介護系企業が人材紹介会社に支払う紹介料は、診療報酬でまかなわれている。本来なら、紹介料を現場の看護師の給与に還元したいというのが経営者の本音だろう。先日、救命救急センターで働く男性看護師から給与額を聞く機会があったが、彼らからは「結婚できない」「家族を養えない」などという寂しい声が聞かれた。就業場所にもよるとは思うが、看護師の給与はまだまだ十分とは言えない地域もある。そんなところからも、診療報酬は本来、紹介料ではなく医療関係者の教育や給与、ご利用者様のための設備投資のために使われるべきだと感じる。

 加えて、これはあくまで私見だが、こうした人材紹介ビジネスの広がりが、医療関係者の人間性や質をも低下させる一因になっているのではないかと、最近感じる。

 本来、専門職である医療職にとって、職場をころころ変えられるような環境はよくない。頻繁に人が入れ替わると、現場への影響が大きいからだ。特に訪問看護の場合、物品の置き場一つとってみても個々の利用者宅に異なるルールが存在するし、利用者からは「同じ看護師さんに来てもらいたい」との声も多い。どんなに職員間で申し送りを徹底しても訪問時は一人なので、職員の入れ替わりが激しいとクレームや事故にもつながりかねない。

 もちろん、企業側が職員に「働き続けたい」と思わせるような職場環境を整える必要はある。また、求職者側にとって人材紹介会社を利用することは、自身のスキルや適性などを総合的に考慮し、最適な就職先を紹介してもらえるなどのメリットもあるだろう。一般社会でも、転職時に紹介会社を利用することは決して珍しいことではない。

 だが、圧倒的に“売り手”市場である看護師の場合、「就職先がいくらでもある」=「嫌ならすぐにやめればいい」とう発想になりがちだ。職場の人間関係や利用者とのちょっとしたトラブルにつまづいただけで、「私は資格があるからどこでも働ける」と“勘違い”し、いとも簡単に辞めてしまうようになるのである。当社に直接「就職したい」と申し込んでくる看護師よりも、人材紹介会社経由で紹介される看護師に、専門職としてのプライドが低い“勘違い”人間が多いように感じるのは、私だけだろうか?

著者プロフィール

多江和晃氏(Life On Vital Element代表取締役)●たえ かずあき氏。福井赤十字看護専門学校卒業後、福井赤十字病院、順天堂大附属順天堂医院などを経て、2007年に起業。現在、都内城南地区を中心に訪問看護事業所8拠点、居宅介護支援事業所等、計11拠点を運営し、14年にフィリピン支社開設。

連載の紹介

多江和晃の「失敗しない!?訪問看護ステーションの創り方」
「最期まで在宅で暮らせる環境を提供したい」ー。そんな思いから土日祝日も運営することをモットーに訪問看護ステーションを立ち上げ、事業拡大を進めてきた多江氏。「人こそすべて」と語る敏腕経営者が、人材マネジメントのノウハウを、自身の“失敗談”も交えて綴ります。

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