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訪問看護は“戦国時代”に突入!

2014/01/10
多江 和晃(Life On Vital Element代表取締役)

 2012年度の報酬改定以降、「訪問看護は儲かる」と思われたのか、新規参入が甚だしい。訪問看護起業ブームなのか?13年は毎月100カ所ペースでステーションが急増した。特に目に付くのが異業種からの参入で、それに乗じて訪問看護起業のための斡旋事業者まで登場している。また、「精神科」「小児科」と専門性を打ち出す事業所も増えている。本来、訪問看護は診療科を問わず看ることができるのに、特化することでサービスの差別化を図っているようである。そうでもしないと生き残れない時代がやってきたのか?

 これらのことは訪問看護が注目されている証拠であり、「病院から在宅へのシフト」という観点で言えば、国の目指している方針に従っており悪くないのだと思う。だが、少し違う方向に行きやしないか危惧することもある。

 新規参入の事業者の中には、明らかに看護師を“食い物”にしていたり、「経営者が一番偉い」と勘違いしている社長もいる。そんな経営者も求職者に対しては大義名分をいくらでも言うだろう。雇われる側の看護師は、自分がどんな人に雇用されるのかについてもっと敏感になるべきだ。個人的には、明確なビジョンを持った看護師資格のある社長に雇われることをお勧めしたい。

「起業」の前に「就職」を
 もっとも、看護師の中にも、起業に対する考えが甘い人はいる。最も懸念するのは、訪問看護の経験が何もないのに起業する人たちがいることだ。

 社長業について私なんかが語るのははばかられるが、端くれとして言わせてもらえるなら、社長には人間としての懐の深さが求められるし、正直、センスやこれまでの人生経験も大きく影響する。社長になることに「格好よさ」とか「憧れ」を抱いて起業を考える人は多いが、大切なのは社長になることではなくて、企業を存続させることだ。ちなみに、企業が大きくなるに従い、自分の思うようにはやりたいことができにくくなり、頭を下げることも増える。イメージとは違う。

 私は昨年11月まで、「多江和晃の失敗しない訪問看護ステーションの創り方」というセミナーを自社で開催していた。それもあって、私のところには毎月のように「将来、訪問看護で起業したいんです」「これから訪問看護で起業するんでお話を聴きに来ました」という面接者や相談者が訪れてくれる。だが、中には「少し教えてもらって」とか「少し勉強させてもらって」という考えの人や、訪問看護未経験の看護師もいる。そういう人たちには正直、「あのねー、簡単に教えられたり盗めたりするものじゃないのよ……」と言いたくなる。

著者プロフィール

多江和晃氏(Life On Vital Element代表取締役)●たえ かずあき氏。福井赤十字看護専門学校卒業後、福井赤十字病院、順天堂大附属順天堂医院などを経て、2007年に起業。現在、都内城南地区を中心に訪問看護事業所8拠点、居宅介護支援事業所等、計11拠点を運営し、14年にフィリピン支社開設。

連載の紹介

多江和晃の「失敗しない!?訪問看護ステーションの創り方」
「最期まで在宅で暮らせる環境を提供したい」ー。そんな思いから土日祝日も運営することをモットーに訪問看護ステーションを立ち上げ、事業拡大を進めてきた多江氏。「人こそすべて」と語る敏腕経営者が、人材マネジメントのノウハウを、自身の“失敗談”も交えて綴ります。

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