日経メディカルAナーシングのロゴ画像

看護師がコストマネジメントを考える意義

2015/01/13
根本康子

 副看護部長になって目まぐるしい日々を過ごし、途中、顎の痛みに苦しんだりしたが、年末年始に9連休となり、仕事から完全に離れてのんびり過ごさせて頂いた。年明け初出勤の折には、年末までのことが遠い記憶の彼方で、思い出すのに苦労した。現実逃避か、物忘れが進行したか……。

 さて、話は変わるが、私は、手術室の師長になって以来、手術室の物流システムの構築に携わってきた。最初は必要に迫られたからではあったが、物流システムを変えることで、看護業務が改善できたり、手術部の運営が効率化されたことから次第に面白くなり、これからの手術室師長は、病院経営の視点を持って業務改革しなければいけないのではないかと考え、医療経営管理を学べる大学院に入学した。

 大学院では、医薬・医材マネジメントのゼミに所属し、その意義や手法について幅広く学び、さらに、自身の課題としては、医療材料のコストマネジメントをテーマに、当院の購買データからコスト削減分析を行った。2年間で、データ管理の重要性はもちろん、多くの気付きと刺激を受け、看護職以外の人脈も広がり自分の財産になった。大学院修了後は、講演の機会をいただくなど、これまで以上に、物流システム、コストマネジメントに対する興味が膨らんでいる。

コスト削減の最大の障壁、実は医師
 ここで、あまり医薬・医材のコストマネジメントに興味がない人は、何が面白いのか分からないと思うので、簡単に説明したい。

 DPC対象病院の場合、基本的な医業収益が包括化されており、増収につなげるためには、患者単価と病床利用率を上げるか、費用の削減が必要で、医薬・医材のコスト削減は病院経営上、欠かせない課題になっている。

 2014年度、消費税率が8%へ引き上げられ、今後10%になることは確実だが、医療従事者の中でも、医療と消費税の関係について意識している人は少ないのではないだろうか?

 患者が支払う医療費は非課税であるが、病院が医療を行うために使う薬や材料、医療機器などを購入する際には消費税が掛かる。そこで、病院の経営を圧迫することがないように、診療報酬に増税分が上乗せされた(実際には目に見えない形で消費税負担が生じているのだが)。しかし、多くの医療機関では、それだけでは実際の費用を補てんできず損税になっているとの報告が出ている。このことからも、コスト削減の重要性が分かる。

 コスト削減のためには、価格交渉をはじめ、同種同効品や在庫の削減を行うのが常套手段であるが、大きな効果を上げるためには、直接関わる医師や看護師の協力が欠かせない。

 当院の手術室では、SPD(Supply Processing & Distribution)業者に、供給、死蔵・過剰在庫削減、請求・発注、保険請求漏れ防止などの管理業務を委託しており、情報システムも構築することによって、コスト削減効果を上げている。日ごろの啓発により、看護師のコスト意識も高い。

 一方で、死蔵・過剰在庫を減らすに当たり、最大の障壁となるのは、実は医師だ。例えば、医師は、新しい材料が発売されると、古い物が残っていても新しい物を使用するので、死蔵在庫が増える。クオリティのためと言われれば納得しない訳にもいかないが、医師が死蔵・過剰在庫がどれだけあって、どれだけの金額になるのか知らないのも現実だ。医師による材料の選択の問題と、使用する材料の標準化が進まないことも、コスト削減の足かせになっている。用度担当の事務職には、医療材料の専門知識を付けて医師との交渉を頑張ってほしいと思うところである。

著者プロフィール

高崎由佳理(杏林大病院副看護部長、左)●たかさき ゆかり氏。1990年杏林大病院入職。産科病棟師長、外来師長などを経て、2014年から現職。12年国際医療福祉大大学院修了。助産師。根本康子(杏林大病院副看護部長、右)●ねもと やすこ氏。1987年杏林大病院入職。2004年手術部師長、14年から現職。13年国際医療福祉大大学院修了。

連載の紹介

新米副看護部長が行く!@杏林大病院
2014年4月に副看護部長に就任した二人の筆者が、看護部での奮闘の様子を交互に綴るエッセー。診療報酬制度など病院経営に直結する話題から、人材育成に関することまで、看護管理全般の話題に幅広く切り込みます。

この記事を読んでいる人におすすめ