日経メディカルAナーシングのロゴ画像

ベテラン師長たちの大量定年退職に備えよ!
~対応迫られる、看護部の“2025年問題”~

2014/08/01
根本康子

 今、新米副部長として、日々の業務に加え、様々な課題に取り組んでいるところであるが、師長として勤務していた時には見えなかったことが見えるようになり、ますますプレッシャーを感じる毎日である。

 医療を取り巻く環境が激変し、健全な経営ができない病院は潰れ、事業継続するためにM&Aが行われる時代である。「大学病院は心配ないでしょ」と言われるが、地域包括ケアシステムの中の一病院として、周囲の病院や施設の動向によって影響を受けることは必至である。これまで以上に地域連携を強化する必要性も実感している。

 看護部長、副看護部長が、看護部として病院のシステムや環境整備に積極的に関わることは重要であるが、近年、現場で病棟管理をする師長の役割もますます重要になっている。一方で、当院に今いるベテラン師長たちは、これから続々と定年退職を迎える。看護部の “2025年問題”が迫っているのだ!それまでに、次の“師長候補”を育成しなければならない。

「マネジメントラダー」で管理職のキャリアを支援
 当院看護部では2005年より、他病院に先駆けて看護管理実践能力を育成・評価するツールであるマネジメントラダーの運用を開始した。環境の変化に柔軟に対応し、看護の質向上と病院の経営に参画できる看護管理者を育成する目的で、当院の機能に合わせて構築したものである(関連リンク:杏林大病院の教育支援体制)。

 看護職員は、入職するとまずは院内のクリニカルラダーを活用する。同ラダーは、看護職者の臨床看護実践能力の習熟段階を示したもの。新人がエキスパートになるまでに、階段を上るように実践能力がステップアップするイメージで、どの段階にどのような知識や能力が必要かが分かるようになっている。さらに、各段階に応じた教育プログラムによってスキルアップできる仕組みだ。

 これに対して、マネジメントラダーは、看護管理者を対象に求められる知識や能力を段階的に分類したものである。当院では、看護管理者を目指す主任から、看護部長までが対象で、レベル1は主任、レベル2は師長、レベル3は副部長部長と段階を分けている。

 主任の期間は、将来、看護部運営や病院経営に参画できる師長になるための知識やスキルを身に付ける重要な時期であると考えており、自分の強み、弱みを理解し、管理者になるために今何をすべきかを知る“道しるべ”としてマネジメントラダーを活用する。

 少し前までは、主任を一定期間経験したら師長になるといった、いわゆる年功序列が当たり前で、個々の能力を客観的に評価した上で昇格をしてきたとは言い難かった(もちろん、誰でもOKだったわけではないが……)。

 そのため、自分が管理職に向いているかどうかも分からず、管理職とは何をする役割の人なのかも十分理解しないまま師長になることで、管理部署の運営や看護職員の育成がうまくいかず、看護職員の大量離職につながるなどのリスクもあった。十分な準備ができずに師長になった本人にとっても、辛い経験になることは間違いない。

 また、少子高齢化が深刻化し、今後、高齢者への医療需要は増す一方、看護師不足が危惧されている。今は1400人余りの看護職員を雇用している当院でも、いずれ看護師確保が困難になることが予測される。新卒看護師の大学病院離れも憂慮すべき課題である。看護師が働きやすい職場作りや教育も、師長に課せられた重要な役割の一つである。

 私が手術部の師長になったのは、ちょうど7対1入院基本料がスタートし、手術の技術料が見直された時であった。病棟看護師の確保が優先されたあおりで、手術部に看護師が補充されず人員不足状態であったにもかかわらず、手術件数が一気に伸びた。看護スタッフは疲弊し、不満が爆発寸前の状態だった。師長としてスタッフの不満をどのように解消したら良いか、どうしたら勤務環境を改善できるか毎日考えたが、解決策はすぐには見い出せず、スタッフ業務をしながら師長業務をこなして何とかしのいでいた。

 いよいよスタッフの不満が抑えられなくなり、病院長に現状の理解と処遇の改善を訴えたところ、病院として対策を講じてもらえた。師長として大きな危機に直面した時に、問題解決のスキルがなかったために、スタッフの疲弊を招いたのだ。私自身、この経験から主任の段階から師長になるための教育をすることが重要だと考えるようになった。

著者プロフィール

高崎由佳理(杏林大病院副看護部長、左)●たかさき ゆかり氏。1990年杏林大病院入職。産科病棟師長、外来師長などを経て、2014年から現職。12年国際医療福祉大大学院修了。助産師。根本康子(杏林大病院副看護部長、右)●ねもと やすこ氏。1987年杏林大病院入職。2004年手術部師長、14年から現職。13年国際医療福祉大大学院修了。

連載の紹介

新米副看護部長が行く!@杏林大病院
2014年4月に副看護部長に就任した二人の筆者が、看護部での奮闘の様子を交互に綴るエッセー。診療報酬制度など病院経営に直結する話題から、人材育成に関することまで、看護管理全般の話題に幅広く切り込みます。

この記事を読んでいる人におすすめ