日経メディカルAナーシングのロゴ画像

インタビュー◎どうなる?これからの看護界
「病院から地域へ、看護のパラダイムシフトが必要」
坂本すが氏(日本看護協会会長)に聞く

「病院における看護から、地域を含めた看護へ頭を切り替えなければならない」と話す日本看護協会の坂本すが氏。写真:秋元 忍

――2013年6月、日本看護協会は「看護の将来ビジョン」を策定すると発表しました。その背景や狙いを教えてください。

坂本 日本の看護師は約6割が病院に勤務しており、これまでわが国の看護は病院が中心でした。しかし高齢化が進み、数多くの高齢者が、身体機能が徐々に低下し最期を迎えるようになる中、さまざまな疾患を抱えながら生活する高齢者を地域で支える看護が重要になります。

 そのような高齢者は、急性期病院の患者像とは異なり、疾患が治癒しないことも考えられます。残った機能を生かして退院後にどのように生活するのか、患者にとって一番いい選択は何かということを看護師は考える必要があります。病院における看護から、地域を含めた看護へ頭を切り替えなければなりません。

 団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けてパラダイムシフトを促すため、日本看護協会として、将来の看護の方向性をまとめる必要があると考えました。

――とはいえ、訪問看護ステーションなど地域での勤務を希望する看護師は少数派です。

坂本 病院中心の基礎教育ばかりでなく、在宅や施設での看護、またQOLを維持向上するための回復(リハビリ)的な看護などを中心に据えた教育が必要です。また、これまで多くの診療科を経験した看護師でなければ訪問看護はできないと思われがちでした。しかし、そのような発想を転換する必要があります。在宅や施設で異常を見抜く訓練を重ねれば、経験に関わらず、訪問看護ができるようになるでしょう。今後は卒後すぐに訪問看護に携わる新卒看護師も出てくると思います。

 もっとも、そうした教育体制を整えるためには、訪問看護ステーションの経営の安定化が不可欠です。本来、24時間365日患者を看るには少なくとも7~8人の看護師が必要と考えますが、現状では訪問看護ステーションの看護師配置は常勤換算で最低2.5人以上と少なく、規模の小さい事業所ほど赤字に陥っています。どれだけやりがいがあると言っても、これでは続きません。事業所の大規模化を推進する方策が必要でしょう。


――認定看護師や専門看護師など、看護師の専門分化が進み、そうした資格を持っていない看護師と温度差が生じるなど弊害も起きています。

坂本 看護師の働き方は多様化しています。医療の高度化によって、看護も専門分化する必要に迫られ、緩和ケアを専門とする認定看護師もいれば、在宅看護専門看護師もいます。またこれまでと同様、領域や専門によらずすべてを統合して見られる看護の能力も必要です。24時間患者のそばにいて異常があれば発見し、手を差し伸べることが看護の基本。ジェネラリストと専門性を持った看護師が互いに補完し合うことが大切です。

 もちろん全体的な看護師の能力を上げていくことは重要です。近年では、各病院がクリニカルラダーを設定しつつありますが、日本看護協会としてもクリニカルラダーを示し、能力ある個々の看護師を認めていく取り組みを始めたいと構想しています。

この記事を読んでいる人におすすめ