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「落としたいけど落とせない」モンスター実習生との日々

2022/06/22
ピネガー由紀

 「Jean, Will you do Mr.Turner’s obs for me?」(ジーン、ターナーさんのバイタルを取ってきてもらえますか?)。数年前のことだ。私の職場で実習中だった看護学生のケリーが看護助手のジーンにバイタルサインの測定を依頼していた。看護師不足が深刻な英国では、看護師は看護助手に自分の担当患者のケアや検査の指示出しをして、自分は他の業務をこなすdelegation(仕事の割り振り制度)が取られている。私も与薬の最中は看護助手に、担当患者のバイタルサイン測定やトイレ介助をお願いしていた。こうしてバイタルサインと与薬を同時に進めることができる。

 しかしこの看護学生ケリーは1年生で初めての実習だ。担当患者はターナーさん1人だけ。なぜ看護助手に仕事を割り振る必要性があるのだろう? 私が何も言わずにケリーの様子を見ていると、病棟のPCから自分の大学のウェブサイトで看護学生同士のチャットルームを見ていた。学生同士の質問や情報交換の息抜きのようなチャットルームで、実習中に見る必要性は全くない。      
 「ケリー、自分の患者のバイタルを取るのはあなたの仕事だよ」と私が言うと、面倒くさそうにPCを閉じ、しぶしぶ血圧測定器を取りに行った。

 英国の看護学生にはさまざまなタイプがいるが、今回はごくわずかに存在、学生指導者の頭痛のタネとなる「モンスター学生」と実習の合否判断について書いてみたい。

著者プロフィール

ピネガー由紀(英国正看護師、フリーランス医療通訳)●ぴねがー ゆき氏。2013年、英国マンチェスター大学看護学部卒。公営の急性期病院(NHS病院)の正看護師として、主に外科部門で病棟、手術前アセスメント、入院管理、学生指導などを担当。2015年よりフリーランス医療通訳としても活動を開始。2020年4月より新型コロナウイルス感染病棟に勤務。ツイッターで情報発信中。YouTubeでも医療英語やイギリスの看護師、連載中に出てくる英文を紹介します。

連載の紹介

ピネガー由紀の「英国NHS看護師の現場ルポ」
母国語同士でも要注意!「病院の言葉」の分かりにくさは、洋の東西を問わない──。英国の公的病院(NHS病院)で看護師として働く傍ら、医療通訳としても活躍している著者が、医療現場でよく使われる英語のフレーズを切り口に英国医療の今を伝えます。

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