日経メディカルAナーシングのロゴ画像

医師に代わって処方も!英国ナースの実力は?

2021/12/15
ピネガー由紀

 税金が主な原資となる英国の医療、すなわちNHS(National Health Service;国民保健サービス)は、慢性的に厳しい経済状況に置かれている。「ウチにはお金がないからね!」と母親から言い聞かされて育つ子どものように、英国の看護学生は「NHSにはお金がないからね!」と大学教育でたたき込まれる。

 例えば、「Cost effective ,clinical effective(コストを抑えて高水準の医療を)」というフレーズは、講義、教科書、文献類で頻繁に使われる。学生に課せられる膨大な論文にもこのフレーズを入れることが半ば公然のお約束になっていて、こう書いておけば加点がもらえた。

 このような状況の英国で、専門看護師はcost effective, clinical effectiveの代名詞と言ってもいいだろう。医師不足と予算不足という英国の慢性的な問題を同時に解消して、効果的な患者ケアができるという優れた解決方法だ。

 英国の専門看護師には、専門分野が細分化されているという特徴がある。専門看護師の種類は数えきれないほどで、例えば癌領域の中でも複数の専門分野に分かれる。私が新卒看護師の時には耳鼻咽喉・頭頸部外科に配置されていたが、ここには癌のスペシャリストとしてHead and Neck Nurse Specialist(耳鼻咽喉・頭頸部外科専門看護師)がいた。同様に、呼吸器外科にはThoracic Nurse Specialist(呼吸器外科専門看護師)、上部消化器科にはUpper GI Nurse Specialist(上部消化器専門看護師)など、それぞれの専門領域に専門看護師が置かれている。

 「コストを抑えて高水準の医療を提供する」ために、昔は医師が行っていた業務を引き継いでいる(タスクシフト)ことも特徴だ。例えば、専門看護師は薬の処方ができる。non-medical prescriberと呼ばれ、「医師以外の処方資格を持つ人」とでも訳せるだろうか。もっともnon-medical prescriberの資格は、専門看護師でなくても既定のコースを取得して試験に受かれば取れる。私の師長もnon-medial prescriberの資格を持つ。

 紹介しきれないほどの専門看護師が存在する英国だが、今回はその中から幾つかを取り上げてみたいと思う。

著者プロフィール

ピネガー由紀(英国正看護師、フリーランス医療通訳)●ぴねがー ゆき氏。2013年、英国マンチェスター大学看護学部卒。公営の急性期病院(NHS病院)の正看護師として、主に外科部門で病棟、手術前アセスメント、入院管理、学生指導などを担当。2015年よりフリーランス医療通訳としても活動を開始。2020年4月より新型コロナウイルス感染病棟に勤務。ツイッターで情報発信中。YouTubeでも医療英語やイギリスの看護師、連載中に出てくる英文を紹介します。

連載の紹介

ピネガー由紀の「英国NHS看護師の現場ルポ」
母国語同士でも要注意!「病院の言葉」の分かりにくさは、洋の東西を問わない──。英国の公的病院(NHS病院)で看護師として働く傍ら、医療通訳としても活躍している著者が、医療現場でよく使われる英語のフレーズを切り口に英国医療の今を伝えます。

この記事を読んでいる人におすすめ