英国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者が減少し、2021年1月半ばにはICUと病棟に400人近くのコロナ患者がいた当院も、今では患者数が0から一桁の間になった。コロナ医療に駆り出されていたスタッフたちも、自分の本来の部署に戻った。病院の外では厳格なロックダウンが段階的に解除され、お店は再開、子どもたちは本格的に学校へ復帰した。ワクチン接種も順調に進んでいる。
今度こそ英国では「コロナからの医療復興」が始まる。コロナ対応に集中するために、国の政策として医療には優先順位がつけられてきた。特に優先度の低い「待機手術」の深刻な遅れは、英国全土で問題となっている。膝や肩などの整形外科手術、局所麻酔に鎮静薬をかけてのマイナー手術や白内障手術などの、いわゆる「不急手術」だ。この分野の手術は、もともと待ち時間が長く、国民に無料で医療を提供するNHS(National Health Service;国民保健サービス)のネガティブな特徴にもなっている。コロナで大打撃を受けて、今では1年以上手術の順番を待っている人は珍しくない。
そこで今回は、私の本業である外科の仕事を通して、NHSの復興について書いていく。
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著者プロフィール
連載の紹介
ピネガー由紀の「英国NHS看護師の現場ルポ」
母国語同士でも要注意!「病院の言葉」の分かりにくさは、洋の東西を問わない──。英国の公的病院(NHS病院)で看護師として働く傍ら、医療通訳としても活躍している著者が、医療現場でよく使われる英語のフレーズを切り口に英国医療の今を伝えます。
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