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英国でコロナ禍でも看護師が増える3つの根拠

2021/02/04
ピネガー由紀

 2021年1月10日、英国での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡者が累計8万人を超え、欧州一の死亡者数を記録した。新規感染者数は連日、6万人を上回り、首都ロンドンでは緊急事態宣言まで出された。英国の公営医療であるNHS(National Health Service;国民保健サービス)の職員は誰もが疲弊している。

 このようなコロナ禍の中で、驚くべきニュースが発表された。英国NHSの医療従事者数がこの1年で記録的に増加している、というのだ。英国NHSで働く看護師数(常勤換算)は、2020年9月時点で29万9184人。前年同月は28万5871人だったので、その差は1万3313人となり、実に4.7%も増えているのだ。同様に、医師は前年比5.2%増、その他の医療従事者も4.5%以上の増加となっている1)

 NHSの医療従事者不足はもう何年も深刻で、国内の医療従事者は減少の一途をたどり、特に医師と看護師は海外からの労働力に大きく依存していた。しかし、COVID-19のまん延により、2020年春から何カ月も外国人医療従事者のリクルートを停止せざるを得なくなった。頼みの綱である外国人に頼れないのに、医療従事者の数が増加している。つまり、英国人や在住者で医療に従事する人が増えたのだ。

 医療従事者がNHSを辞める原因は、待遇の悪さにある。これはNHS本部でさえ認めている。しかもコロナ禍の今でさえ、NHSの待遇は何一つ改善されていない。それどころか、さらなるプレッシャーにさらされているのだ。それにもかかわらず、なぜこれだけの増加があったのか? そこで今回は、NHSで働く看護師が増えた背景について書いてみる。

著者プロフィール

ピネガー由紀(英国正看護師、フリーランス医療通訳)●ぴねがー ゆき氏。2013年、英国マンチェスター大学看護学部卒。公営の急性期病院(NHS病院)の正看護師として、主に外科部門で病棟、手術前アセスメント、入院管理、学生指導などを担当。2015年よりフリーランス医療通訳としても活動を開始。2020年4月より新型コロナウイルス感染病棟に勤務。ツイッターで情報発信中。YouTubeでも医療英語やイギリスの看護師、連載中に出てくる英文を紹介します。

連載の紹介

ピネガー由紀の「英国NHS看護師の現場ルポ」
母国語同士でも要注意!「病院の言葉」の分かりにくさは、洋の東西を問わない──。英国の公的病院(NHS病院)で看護師として働く傍ら、医療通訳としても活躍している著者が、医療現場でよく使われる英語のフレーズを切り口に英国医療の今を伝えます。

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