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腹痛患者の緊急手術!NPである私の役割は――

2015/12/21
永谷 ますみ(藤田保健衛生大学病院 中央診療部 診療看護師)

 総合消化器外科ローテーション中のある日の朝、いつものように電子カルテで患者さんの情報収集をしていると、院内携帯電話が鳴りました。時計を見ると8時10分。「始業前のこんな時間に何だろう?」と思いながら出ると、「ERに運ばれてきた患者さんが、これから緊急手術になりそうだから来てくれる?」と指導医の先生からの電話でした。

 患者さんは腹痛と嘔吐で救急搬送された80歳代の男性。意識は清明で、体温37.4℃、血圧159/86㎜Hg、脈拍91回/分、呼吸数20回/分、SpO296%(room air下)と、バイタルサインは落ち着いていました。腹部所見は平坦で軟らかく、左下腹部に圧痛があり、反跳痛や筋性防御はありませんでした。「この患者さん、緊急性はあるのかな?」と違和感を覚えながら情報を収集していると、異物による腸閉塞であることが分かりました。

 「異物って?」「何?なんだろう?」と疑問に思っていると、CT画像を見ながら先生たちが何やら話をしていました。「ああっ、確かにここにあるねえ~。これだ。これだ」と画像を指さしながら、場所の同定をしていました。確かにCTで確認すると、小腸内に異物と思われるリング状の何かがはっきりと映っていました。

 この患者さんは2009年に他院で胃瘻を造設しました。数年後には食事摂取が可能となり、最近胃瘻の抜去を試みたそうですが、うまくできなかったため切断したところ、胃瘻の一部が十二指腸に残留してしまったそうです。救急搬送される前日に、他院からの紹介状を持参し当院の消化器内科を受診されました。内視鏡下で残留している胃瘻を回収する予定でしたが、トライツ靭帯近傍の大きな憩室にはまり込んでおり回収できずに断念しました。翌日、再度CTで確認する予定でした。救急搬送された日は朝から気分がすぐれず、茶褐色の嘔吐を認め、当院に搬送されました。ERでの検討の結果、内視鏡での回収は難しいと判断され、緊急手術で異物除去が行われることとなりました。

緊急手術の全身麻酔の準備を代行
 着々と手術準備が進む中、「自科麻酔でもよければ、すぐに手術はできます」と手術室から連絡が入りました。当院は局所麻酔・全身麻酔合わせて年間1万件以上の手術が行われており、この日も朝から多くの手術が予定されていました。あいにくこの時間から麻酔を担当できる麻酔科医はおらず、外科医が麻酔科医の代行で行う自科麻酔ならすぐに手術可能な状況でした。

 通常は術者と第1、第2助手の3人の医師で手術を行いますが、自科麻酔で外科医が1人必要となれば、計4人の外科医が必要となります。しかしERには3人の外科医とFNPである私1人のみ。この日は朝から総合消化器外科の予定手術があり、瘻孔造影検査や病棟回診、外科外来などの通常業務で外科医の人手はギリギリでした。

著者プロフィール

2014年3月、藤田保健衛生大学大学院保健学研究科看護学領域急性期・周術期分野を1期生として修了し、「診療看護師」として勤務する8人が執筆を担当します。

連載の紹介

NP養成の舞台裏@藤田保健衛生大学
各地の看護系大学院で養成が進む診療看護師(Nurse Practitioner;NP)。その一つ、藤田保健衛生大学大学院の修了生が、大学院での学びや現場での実習の様子など、NP養成の“舞台裏”を紹介。看護師が治療の視点を持つ意義について考えます。

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