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身近な薬剤の基礎を知る、薬理学の面白さ

2015/04/16
下村愛(藤田保健衛生大学病院中央診療部 診療看護師)

 聞いただけで難しそうと拒否反応を示してしまいそうな薬理学のシラバスを、授業の前に読んでみました。科目概要には「薬物に対する生体の相互反応を、薬力学および薬物動態の両面から捉え、現代臨床で用いられる薬物の分類、作用、相互作用などを学習する」とあり、到達目標には「個体・細胞・分子レベルにおける薬物の作用機序を、生体と薬物分子との相互反応として説明できる」と書いてありました。果たして私に理解できるだろうか?

 初回の授業のテーマは、ADME(アドメ)。ADMEって何!?

 薬剤を投与した時、すべての薬は「吸収:Absorption」「分布:Distribution」「代謝:Metabolism」「排泄:Excretion」という過程を経ます。そのため、薬物動態を理解するためにはこの4つの過程の頭文字を取ったADMEを学び、組み合わせて考える必要があります。看護師として臨床で働いていたころ、どんな作用を持つ薬剤であるかを深く知ろうとするというよりは、配合変化を起こす薬剤ではないか、投与速度などに注意が必要な薬剤ではないか、併用禁忌の薬剤ではないか、どの点滴ルートから投与すべきか、などに気を配っていた私にとっては、まさに薬理学の基礎を知る第一歩となりました。

「バファリンの半分は優しさ」の意味
 薬物動態として血中薬物濃度を考える上では、まずは薬剤が血管内に入らなければなりません。静脈注射では、薬剤を血管内に直接投与するためこの過程を飛ばして考えることができますが、経口薬の場合、多くは腸から吸収されるため、腸からどのように薬が吸収されていくかを考える必要があります。経口から摂取された薬剤は、胃液や腸液のpHに応じてイオン型(親水性)もしくは非イオン型(疎水性)で存在し、後者は脂溶性が高いなどの理由で消化管からの吸収が良いのが特徴です。例えば、アスピリンなど酸性の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は胃液中では非イオン型となり、胃粘膜に吸収されて胃粘膜障害を起こします。そこでアスピリンに塩基中和剤を足して胃酸を中和することにより胃粘膜で吸収されにくくしているのがバファリンです。「バファリンの半分は優しさでできている」とCMで謳っている“優しさ”の成分は塩基中和剤である、と学びました。

 次に、吸収されて体内に入った薬剤が適切に効果を発揮するためには目的とする臓器に到達して作用する必要があります。そのためには、循環血液中の蛋白質(主にアルブミン)と結合しない、いわゆる遊離型薬物分子が体のすみずみへ「分布」しなければなりません。

 分布において相互作用が問題となる薬剤の組み合わせの一つに、抗血小板薬のアスピリンと血糖降下薬のトルブタミドがあります。双方とも蛋白結合率の高い薬剤ですが、アスピリンの方がより高く、同時に服用するとアスピリンと蛋白質が結合し、血中にトルブタミドが多く遊離する(つまり、臓器に到達するトルブタミドが増える)ことになるため、トルブタミドの作用が強く表れ低血糖を起こすことがあります。両薬剤が併用禁忌である理由を学びました。

著者プロフィール

2014年3月、藤田保健衛生大学大学院保健学研究科看護学領域急性期・周術期分野を1期生として修了し、「診療看護師」として勤務する8人が執筆を担当します。

連載の紹介

NP養成の舞台裏@藤田保健衛生大学
各地の看護系大学院で養成が進む診療看護師(Nurse Practitioner;NP)。その一つ、藤田保健衛生大学大学院の修了生が、大学院での学びや現場での実習の様子など、NP養成の“舞台裏”を紹介。看護師が治療の視点を持つ意義について考えます。

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