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三次救急の理想と現実

2014/09/24

 皆さんこんにちは。中村雪子です。いつもありがとうございます。

 さて、今回は私が日々働いている中で疑問に思っていること、怒りを感じることについて触れたいと思います。ここで書いていることはあくまでも私一個人の意見です。感情的と捉えられるかもしれません。ですが、救命の現場で現実に起きていることです。

 私の施設は救命救急センターです。三次救急を主に扱っていますが、日々、救急隊のオーバートリアージにいら立ちを隠せません。「オーバートリアージになってしまうのはある程度仕方がない」と、救急隊に一定の理解を示す医者もいます。そのこと自体は一理あると頭では理解していますが、日々現場で患者さんに関わる中で、救急隊の三次選定には多々疑問を抱きます。「お前は救急搬送の現場を知らない」と言われるかもしれません。ですが、オーバートリアージされた結果、三次救急の手当を“本当に”必要としている患者を受け入れられないこともまた事実です。

 少々偏ったケースと感じる方がいるかもしれませんが、当院に三次搬送される典型的な症例を以下に示します。

 80歳代男性。既に寝たきりで要介護5。意思疎通も乏しい。在宅で介護しており家族と主治医の間でDNAR(Do not attempt resuscitation)の方針が決定していました。その日、いつもより反応が悪いということで家族が救急車を呼び、当院に救急要請がありました。救急隊からはホットラインで、家族の希望がDNARであるとの情報が入ってきました。

 当院の医者は、「そもそも、家族の意向がはっきりしているこの患者さんは三次適応ではなく、主治医に回すべき」と救急隊に意見しました。基本的に三次救急に連れて来るということは、挿管含めフルコースで行うことを意味するからです。

 しかし、そこで救急隊が取った行動は、“家族に挿管を承諾させる”こと。そして「挿管の承諾が取れ、救命を希望しています」との続報があり、患者さんは搬送されました。挿管の前に家族に意向を確認したところ、「意識がなくなって焦った。救急隊に『挿管を承諾しないと救命に搬送できない』と言われた。意識もなくて動転していたから承諾したけど、本当は挿管などは一切望んでいない。こんなことになるなんて思わなかった」というものでした。このケースでは、家族の意向に沿い、挿管はせず静かにお看取りしました。

 このパターン、多いです。在宅療養中の方の搬送(施設入所中の方でもよくありますが)は大体このパターンと言っても過言ではないくらいです。まず主治医に連絡を取ることは非常に少なく、“意識障害”ということだけで三次選定になるんです(もちろん救急隊により判断・対応が変わることはあるでしょう)。

 救急隊の責務の一つは、患者を病院に搬送することでしょう。その中でこのケースのように「とりあえず三次救急に送ればいい」という救急隊の意図がはっきり見えているケースが多々あることも事実です。彼らに私が求めるものが大きいのかもしれません。ですが、マンパワーや病床の問題などで、本来なら三次対応ではない患者の対応をしていたために断らざるを得ない“本物”の三次対応の患者がいます。いわゆる「たらい回し」の原因の一つです。この「たらい回し」という言葉。救急隊が作った言葉だという記事を以前にネットで読んだことがあります。数年前、東京・大阪で起きた妊婦の「たらい回し」事件の頃です。

 私はこういった救急要請があった時は、救急隊に非常に憤りを感じます。私は「たらい回し」を作っているのは、救急隊に大きな要因があると思うのです。もちろん家族の受け止め、主治医との連携・話し合い不足、2次救急の受け入れ態勢の不備など、ほかにも問題点は多々あるでしょう。あまりにもオーバートリアージの症例が多いため、以前、当院の医者が救急隊を対象に搬送目安の判断について勉強会を行いました。その時は幅広いエリアから数十人の救急隊員の参加がありました。ですが、勉強会が役に立ったのか、その頃から今まで疑問のままです。

著者プロフィール

中村雪子氏●なかむら ゆきこ氏。看護師歴15年のアラフォーナース。地元の看護学校卒業後、総合病院外科系病棟に就職。その後、急性期看護を極めるため、救命救急センターのある現在の病院に転職。

連載の紹介

中村雪子の「ナースな日々」
救命救急センターでスタッフナースとして働く中村雪子氏(ペンネーム)が、仕事の話題からプライベートに関することまで、“ナースな日々”を綴ります。

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