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ママさんナースの復職を阻む3つの壁

2018/06/29
加納一樹(ハイズ株式会社 コンサルタント)

 「復職を考えているのですが、日勤常勤で働ける職場はありますか?」―─キャリアアドバイザーである私が、看護師さんからよく受ける質問の一つです。出産が終わり、その後の生活も落ち着いてきたので看護師として復職したいけれど、子どものお迎えがあるから働ける時間に制限があるという悩みは、ママさんナース(家庭に小さな子どもがいる女性看護師)の多くがぶつかる壁だと思います。制約が大きいため、復職活動がうまく前に進まないという方もいるでしょう。

 就業中の看護師の総数は、2016年度(平成28年度)時点で約166万人とされています1)。一方、潜在看護師(看護師としての仕事に就いていない人)は、2010年(平成22年)末時点で約71万人以上いるとされています2)。結婚や出産などの理由で退職したまま、看護師として復帰できていないケースが多いことが浮かび上がります。

3つの壁がママさんナースに立ちはだかる
 なぜ、産前産後休業・育児休業後の看護師の復帰は難しいのでしょうか。その要因は大きく分けて3つあります。

 1つ目は「夜勤の壁」です。医療機関の病棟勤務には夜勤業務が発生します。ここが看護師以外の仕事とは大きく異なる点です。小さな子どもがいる場合、夜勤中に子どもを預かってくれる「自分以外の誰か」が必要となります。それは自身のパートナーや両親、あるいは24時間運営託児所の保育士など、個人の状況によって変わるでしょう。必然的に支えてくれる相手との調整が発生し、この調整がうまくいかないと復職の壁は高いものとなります。

 2つ目は「休日のシフト制の壁」です。看護師の勤務形態では、休日は固定休(土日休み)ではなく、シフト制(不定期休)であることが一般的です。そのため、病院併設でない院外の保育園に子どもを預けていた場合、一般に保育園が休みとなる日曜日・祝日に「誰が子どもを預かるか」という問題が発生します。ベビーシッターを雇うという手もありますが、実際はまだまだ少数事例だと思います。したがって、小さな子どもがいる場合は、夜勤と同様に「自分以外の誰か」の協力が必要となります。

 最後に「スキルの壁」。子どもが小学生になるまでは働かず育児に専念するという選択もよく聞くところです。このような場合、現場から長期間離脱することにより「技術が落ちていないだろうか」という不安が膨らんでいき、復職への足かせとなってしまいます。看護師は技術職なので、技術力の低下による復職困難事例も多いように思います。

 上記3つの要因が、独立してあるのではなく、複合的に絡み合うことがやっかいです。人によっては、「夜勤もできないし、土日も出勤できない」こともあるでしょう。そして、その解決方法が見えないことが、「復職へあと一歩踏み出せない」という不安な気持ちにつながります。

「譲れるもの」「譲れないもの」を明確にしよう
 出産後も看護師として働きたいと考えている方は、まずは自身の状況を整理することが大切です。自身の復職に関して「譲れるもの」「譲れないもの」を書き出すだけでもスッキリします。状況を整理しないままでは、たとえ行動を起こしたとしてもゴールが見えず、復職へのモチベーションを保つことができません。「敵」を知るために、まずは己を知ることから始めましょう。

著者プロフィール

加納一樹(かのう かずき)◎ハイズ株式会社 コンサルタント。2011年高知大学農学部卒業。2013年茨城大学大学院農学研究科修了。医療コンサルタントとして人的資源の視点から医療機関経営の再建に携わる。前職の大手人材紹介会社では、看護師専門のキャリアアドバイザーとして、1000人以上の転職面談やキャリア相談に従事。

連載の紹介

看護師キャリアの曲がり角
看護師の働き方は「無限大」です。キャリア迷子になっている人も、視野を広げて様々な可能性に気づくことができれば、その後の人生が変わります。本連載では、豊富な相談実績を持つキャリアアドバイザーの筆者が、具体的な事例を交えながら、看護師が自らのキャリアを選び取っていくために必要な思考と行動のヒントを伝えます。

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