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風疹流行、2013年の悪夢を繰り返すな

2018/09/19
忽那賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター)

 Aナーシングに最後に原稿を書いたのはいつだっただろうか……。もはや記憶に残っていないくらいなので相当前のような気がする……。もしかしたら戦前のことかもしれない(生まれてないっつーの)。いろんな人から「あのAナーシングの連載、面白かったです」と過去のもの扱いされ、そしていつの日からか担当の編集者からも原稿の催促すら来なくなり……。ここまで来ると原稿が書けないという焦りは全くなくなり、書けなくてもすっかり心の平静を保つことができるようになった私である。「ま、原稿書けないところも含めてオレじゃん?」くらいの悟りの境地に達しているのである。

 そんな私が今、原稿を書こうとしている……。それはなぜか。風疹が流行っているからなのである。これはさすがに書かんといかんな、と思ったのである。でもあまりにも時間が空きすぎたので、担当の編集者に送るのも気まずすぎて、日経メディカルの別の知り合いの編集者にこの原稿を送っている私である。平静を保っているとか言いつつ、意外と気にしているのである。

 それはともかく風疹が流行っている……。東京都、千葉県を中心に8月から症例が増加してきており、国立感染症研究所 感染症疫学センターによれば、2018年9月11日時点での報告数は362例にも上り、これは昨年の4倍のペースだという。4倍はまずい。非常にまずい。このままではこのままでは2013年の悪夢の再来ではないか。(関連記事:風疹感染、首都圏から他の地域へ拡大の可能性)


多くは「ワクチン打ってないから罹っちゃいました」
 読者の皆さんは2013年に何が起こったか覚えているだろうか。もうかなり前のことなので、もしかしたらまだ生まれていない読者もいるかもしれないが(生まれてるっつーの)、2013年に日本は風疹の大流行に見舞われたのである。関東を中心に1万7000人を超える感染者が出ただけでなく、問題なのはその結果として45人もの先天性風疹症候群が報告されたことなのである。風疹の流行はただ過ぎ去ったわけではなく、我々に巨大な爪痕を残していったことを忘れてはならないのである。それなのに、また我々は同じ過ちを繰り返そうとしている……。これはいかんでしょ。「動かざること山のごとし」で定評のある忽那氏も、さすがに原稿を書かざるを得ない事態なのである。

 前回の2013年の流行では、30~40歳代の男性が風疹罹患者の77%を占めたわけだが、今回の流行でも同様に30~40歳代の男性に多いことが分かっている。これはなぜかと言えば、この世代の男性(1962~1978年度生まれ、2018年現在39~55歳)は定期接種として風疹ワクチンを接種していなかったからなのである。

 図1は、2013年の流行時に風疹に罹患した男性患者を風疹ワクチン接種歴ごとに見たものだ。このグラフからはっきりと分かるように30~40代の男性が最も多い。しかも症例の95%以上が「ワクチン接種歴不明、なし、1回」のいずれかなのである。「ワクチン打ってないから風疹に罹っちゃいました」ということが丸わかりなのであって、ワクチン接種の重要性を改めて思い知らされるのである。


著者プロフィール

くつな さとし氏●2004年山口大学医学部医学科卒。関門医療センター、市立奈良病院などを経て、2012年から国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。趣味はお寺巡りとダニ収集。

連載の紹介

忽那賢志の「感染症相談室」
感染症にまつわる臨床現場でのさまざまな謎や疑問を徹底的に究明。複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れていきます。

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