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HIV患者を診るために必要なのは覚悟ではない!

2017/06/05
忽那賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター)

 Aナーシングをご覧の皆様、こんにちは。忽那です。先日(2017年4月19日)放送の「総合診療医ドクターG」(NHK総合)をご覧いただけましたでしょうか。このAナーシングの連載から生まれた「DU(だいたいうんこ)」がついにNHKで放送されたんですよッ!NHKでうんこですよ、皆さんッ!Aナーシングから生まれたDUは世界に羽ばたいています…。これもひとえに僕一人のおかげだと思っています。いや、忽那の神様である「くつな石」にお祈りした効果が出たんだな、きっと。

「HIV患者に対応できる歯科医」は特別なのか
 さて、そんなグッドニュースで始まった久々の感染症相談室ですが(もはや「連載」という概念が完全に崩壊してます)…いきなりだけど今日はオレ、怒ってっから。突然モードが切り替わってワリィけど、オレ、もう怒りが頂点に達して何すっか分かんねえから。忖度(そんたく)しちゃうかもしれねえから気を付けろよマジで(連載ペースが遅すぎて微妙にネタが古いし、忖度が何なのかいまだによく分かってません)。

 何に怒ってるかっつーと先日、外勤先の外来で診ているHIV患者が「銀歯が抜けた」ってことで歯科を受診したいっておっしゃったわけ。オレとしては「ああ、じゃあ適当な歯科を受診してください」って言いたいとこなんだけど、一応外勤先のクリニックの決まりとして、クリニック独自作成の「私たちはHIV患者を診ます歯科医リスト」の中から患者に選んでもらって、お電話した上で紹介状をしたためるってことになってるから、長いものには巻かれるタイプのオレとしてはおとなしくそれに従ったわけ。

 で、患者が選んだクリニックに電話してみたら、受付の人が丁寧な感じで「はい、当院ではHIV患者様の診療もいたしております」って言ってくれたので、素敵なクリニックじゃねえかバカヤローと思って「じゃ、よろぴくお願い申し上げま~す☆」って感じで電話を切ろうとしたら、受付の方が付け加えて「あ、すみませんが、HIV患者様に対応できる歯科医の勤務日が水曜だけになりますので、水曜日にご紹介いただきますようお願いいたします」って言われたわけ。もう、それ聞いて絶句よ。思わず左手に持ってた忖度を床に落としそうになったわ(忖度の使い方、これで合ってますか?)。

 ちゅーか「HIV患者に対応できる歯科医」って何なのかと。HIV患者の対応に何か特殊なスキルが必要なのかと。ツルバダ(商品名:抗HIV薬)入りの銀歯とか入れるのかと。表向きは「うちはHIV患者も診ますよ~」みたいなこと言っておいて、逆にHIV患者に対する偏見丸出しじゃないかって思うんだけど。いやー、残念っす、マジで。もちろん、これって歯科医だけじゃなく、他の診療科のクリニックや病院でも同じことだけどね。関西の某病院なんかエイズ治療拠点病院なのにHIV患者の手術しないとか言ってるから

知識があればHIV患者を普通に診れるはず
 でも、この歯科クリニックの「HIVを診れる歯科医」と「HIVを診れない歯科医」の違いってマジで何なんでしょうね。少なくとも「覚悟」ではないと思うけど。僕もHIV患者を診てて、採血も直腸診もやってるけど、別に「オレはいつHIVに感染してもいい」なんて覚悟して診てるわけじゃないから。

著者プロフィール

くつな さとし氏●2004年山口大学医学部医学科卒。関門医療センター、市立奈良病院などを経て、2012年から国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。趣味はお寺巡りとダニ収集。

連載の紹介

忽那賢志の「感染症相談室」
感染症にまつわる臨床現場でのさまざまな謎や疑問を徹底的に究明。複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れていきます。

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