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もういいッ…!休めッ…!

2017/01/24
忽那賢志(国立国際医療研究センター国際感染症センター)

図1 「最強伝説黒沢」のワンシーン
©福本伸行/小学館

 国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那(くつな)です。この連載は複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れ、様々な謎や疑問を徹底的に究明するものです。

 さて、インフルエンザ、流行ってますね。今年は例年よりも少し早く流行が始まっており、これを書いている2017年1月上旬現在、私の勤める病院でもご多分に漏れずインフルエンザ患者が後を絶ちません。インフルエンザの診断や治療については以前お話ししましたが(「これでいいんか、インフルエンザ診療(その1)(その2)」)、今回は医療従事者がインフルエンザになったときのことについてお話ししたいと思います。

間違った「美学」が患者を危険に曝す
 皆さんはご自身が体調を崩したとき、ちゃんと職場の上司に報告していますか?時々、解熱薬をこっそり使いながらマスクを装着して仕事をこなしている人を見かけます。自己を顧みずに咳をゴホゴホしながらも懸命に患者を看護するその姿は、まさに看護師の鏡…。おじさん、涙が出てくる…わけねえだろバカヤロウ!!病院でウイルスばらまいてんじゃねえ!患者にうつしたらどうすんだよぉッ!

 健康な人がインフルエンザになってもたいてい自然に良くなりますが、高齢者や免疫不全のある人などにインフルエンザをうつすと重症化して、時に死に至ることもあります。時々、病院でインフルエンザのアウトブレイクが起こったというニュースがありますよね。あれって感染源は様々ですが、実は医療従事者から広がったって事例もあるんです。つまり、我慢して仕事を続けてたら自分の病院が大変なことになることもあるし、最悪の場合は患者を生命の危機に曝すことにもなるのです。患者のために働いているはずが患者に害を与えてしまう…医療従事者が一番やっちゃいけないことですよね。

 「体調を崩したらちゃんと仕事を休もう!」

 これが今回、私が言いたいことのすべてです。非常にシンプルなメッセージです。しかし!こんな当たり前のことが、なぜか守られないのが医療の現場の実情なのであります。嘆かわしい…。

 なぜ、医療従事者の中には、体調を崩しても申告せずに働き続ける人がいるのでしょうか。一つには「自分が体調を崩しても患者のために働き続ける美学」とでもいうべきものがあるでしょう。非常に日本人的な考え方です。例えば、こんな感じです。

 「クッ…たとえ熱が39℃あったとしても、オレは患者のために働き続けてみせるッ!それがオレの生き様だッ!!」

 昔の少年ジャンプとかで、こういう熱血キャラいましたよね。なんか「頑張る自分」に酔ってるっていうんでしょうか。私自身「頑張る美学」というものを100%否定するものではありませんが、こと医療従事者の体調不良に関しては悪影響しかありません。われわれは、頑張りすぎることが時として職場に迷惑をかけることもあることを知らなければなりません。だから、もういいッ…!休めッ…!

 突然ですが「最強伝説黒沢」(福本伸行)って読んだことありますか?まあ、あまり看護師さんが黒沢を読んでるところをイメージできませんが、構わず続けます。あのマンガで、ボロボロでもうほとんど「壊れかけのレディオ状態」※1なのに懸命に誘導棒を振り続ける交通整理の人形「太郎」に向かって黒沢が「もういいッ…!休めッ…!」って叫ぶシーンがあるんですが(図1)、まさにそんな感じですね。

※1 歌手・徳永英明氏の代表曲「壊れかけのRadio」より。特に忽那が徳永英明ファンというわけではありません。

著者プロフィール

くつな さとし氏●2004年山口大学医学部医学科卒。関門医療センター、市立奈良病院などを経て、2012年から国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。趣味はお寺巡りとダニ収集。

連載の紹介

忽那賢志の「感染症相談室」
感染症にまつわる臨床現場でのさまざまな謎や疑問を徹底的に究明。複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れていきます。

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