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CRP大好き派/使わない派、それぞれの言い分

2015/04/02
忽那賢志

 国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那(くつな)です。この連載は、複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れ、様々な謎や疑問を徹底的に究明するものです。第5回となる今回は「CRPは役に立つのか?」について考えたいと思います。

日本の医療者は「CRP大好き派」が多い?
 日本の医師の多くはCRPが大好きなのではないかと思います。 もちろん私も、ご多分に漏れずCRPが好きな医師の一人であります。 研修医がカンファレンスで症例提示するときにCRPの値について触れなかったら「ねえねえ、CRPはいくつだったの?ねえねえ」と必ず聞くくらいCRPが好きなので、一部では私のことを「CRP厨」と呼ぶ者もおります。

 看護師さんの中にもCRPが好きな人は多いのではないでしょうか。だって、よく病棟で看護師さんに「あの患者さん、CRP順調に下がってきてますね」とか、「今日の採血でCRPが上がっていますが大丈夫でしょうか」とか言われますから。

 皆さんは「熱の原因は分からんが、CRPが高いから入院だ!」という医師のアセスメントを聞いたことがありませんか?ありますよね?良いか悪いかはともかく、ごく一部の病院を除いて、日本の病院で働いていればどこにでもある光景だと思います…。しかし、この一見安易に思える「CRPが高い→ヤバイ!」というアセスメントには、キラリと光る真実が隠されています。なぜなら、CRPが高い人には「何かある」に違いないからです。健康な人はCRPが高いことはないですから。ましてや「診断が付いていないけどCRPが高い」という患者さんについては、安易に帰宅させない方が無難だと思います。これは日本の医療が紡ぎ出した知恵なのですッ(すみません。ちょっと大げさかもしれません)!

 そもそもCRPとは何でしょうか。CRPは「C反応性タンパク(C-reactive protein)」の略で、肺炎球菌のC多糖体という成分に結合することから、この名が付いています。体内で炎症が起こると産生されるタンパク質ですので、CRPが高いということは体の中に炎症が起こっていることを意味するわけです。どこで炎症が起こっているかは分かりませんが、とりあえず「体のどこかが燃えている」ことは分かる、とても便利な検査です。

 しかし、世の中にはどこにでも対立構造があります。資本主義があれば社会主義がある。うどん派がいればソバ派がいる。そして、「CRP大好き派」がいれば「CRP使わない派」もいるわけです。

 では、「CRP使わない派」の方々は、なぜこんなに便利なCRPを使わないのでしょうか?

「CRP使わない派」の言い分も十分に理解できる
 まず、彼らの言い分の一つに「CRPは非特異的な検査であり、どこで炎症が起こっているかは分からない」ということがあります。確かに、「体のどこかに異常があるか」は分かっても、「どこに異常があるか」が分からなければ正しいアセスメントはできません。よく「CRPが高いので抗菌薬投与」といった間違った医療行為が行われていますが、これは確かにCRPの弊害と言えるかもしれません。炎症の原因は感染症に限らず、膠原病や悪性疾患のこともあります。感染症だったとしても、どこに感染が起こっていて、どんな病原微生物が悪さをしているか、というアセスメントなしに抗菌薬を投与することは、正しい感染症診療とは言えません。「CRP使わない派」にとって、CRP測定は正しくない医療行為を生み出すことにつながる悪しき風習というわけです。

 また、もう一つ注意すべき点は「CRPは万能ではない」ということです。例えば、感染症を発症してからしばらくはCRPが上昇していないことが多々あります。また、感染症で熱がバンバン出ていてもCRPはほとんど上昇しないこともあります。例えば、昨年国内でも流行したデング熱がそうです。つまり、「CRPが高いと体の中で異変が起こっていることは分かるが、CRPが低くても体の中に異変がないとは限らない」ということですね。この点は確かに注意が必要です。

著者プロフィール

くつな さとし氏●2004年山口大学医学部医学科卒。関門医療センター、市立奈良病院などを経て、2012年から国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。趣味はお寺巡りとダニ収集。

連載の紹介

忽那賢志の「感染症相談室」
感染症にまつわる臨床現場でのさまざまな謎や疑問を徹底的に究明。複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れていきます。

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