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知ってますか?ワクチンの持つ“もう一つ”の意味

2015/03/20
忽那賢志

 国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那(くつな)です。この連載は、複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れ、様々な謎や疑問を徹底的に究明するものです。

 先日、救急外来で、看護師さんが「今年のインフルエンザワクチンはイマイチ効かないよね~」などと、まるでその年のボジョレーヌーボーの出来について語る川島な○美のように、2014年のインフルエンザワクチンの効果について語っていたので、今回はワクチンの話にしたいと思います。

ワクチン未接種は「自己責任」では済まない問題
 2015年2月末、愛知県と静岡県で14人の風疹患者が出たと報道されました。「たった14人でしょ?大げさだな~」などと思ってはいけません。大流行の始まりには,いつもこういった小規模の流行があるのです。2013年、日本は風疹の大流行を経験し、残念ながら40人を超える先天性風疹症候群の罹患児が出てしまいました。われわれは、この教訓を生かさなければなりません。

 また、アメリカではディズニーランドでの感染を契機とした麻疹の流行が起こり、話題になったばかりです。120人を超える感染者のうち、半分は麻疹ワクチンを打っていなかった人たちです。この未接種者の中には、まだ定期接種の時期になる前に感染した子どもだけでなく、「ワクチンは打たない」という信条の下に接種をしなかった人が28人もいたということです1)

 これらの麻疹や風疹の流行を防ぐ一番確実な方法はワクチン接種です。医療従事者であるわれわれにとっては常識ですよね。しかし!世の中には「ワクチンなんてとんでもない!絶対に打っちゃダメ!」と主張する人たちもいます。こういった人たちの中には、運悪くワクチン接種による副反応の害を被った方もいらっしゃるでしょうし、ホメオパシーなどのいわゆる「代替医療」を支持する方もいらっしゃるでしょう。

 私と彼らワクチン反対派の主張は相容れませんが、現代社会で生きていくためにはこういった多様性をある程度許容していかなければいけないとは思います。しかし、それは周りに迷惑をかけなければ、という前提があってこそです。別に彼らがワクチンを打たずに麻疹や風疹にかかってしまったとしても、そこで完結するのであれば「自己責任」という言葉で片付けられるのかもしれません。でも、彼らは彼ら自身が感染源になり、他の人たちに感染症をうつしてしまうのです。現に、アメリカの麻疹のアウトブレイクではそのようなことが起こっています。

 厄介なことに、時々、医療従事者の中にも「ワクチンを打ちたくない」という人がいます。私は院内の感染管理にかかわることも多いため、「つーかオレ、生まれてから今までインフルエンザなんかかかったことないんスけど。超健康だし。ワクチンなんて打つ意味あるんスか?あれマジ痛いんスよね~」という医師に遭遇することもあります。こういう困った医師には「お前の健康自慢なんか聞いてねえよ!(すみません、ここ、思いっきりフォントを小さくしてください)」と心の中で思いつつ、懇切丁寧に、とことん下手に出て、ワクチンの必要性をこんこんと説明しています。ワクチンを打つ・打たないは個人だけの問題ではないのです、と。どうかお願いしますからワクチンを打ってください、と。

著者プロフィール

くつな さとし氏●2004年山口大学医学部医学科卒。関門医療センター、市立奈良病院などを経て、2012年から国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。趣味はお寺巡りとダニ収集。

連載の紹介

忽那賢志の「感染症相談室」
感染症にまつわる臨床現場でのさまざまな謎や疑問を徹底的に究明。複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れていきます。

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