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インフルエンザを診断するのは誰?
これでいいんか、インフルエンザ診療(その1)

2015/02/16
忽那賢志

 国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那(くつな)です。この連載は、複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れ、様々な謎や疑問を徹底的に究明するものです。というか、前回からの方向性としては「間違ったことをしている医師を発見してツッコミを入れよう!」という趣旨になっている気がしますが、まだこの第2回を書いている時点では読者の皆さんの反応が読めない状況ですので、暗中模索で突き進んでおります(ファンレター待ってます!)。第2回となる今回は「インフルエンザを診断するのは誰?」です。

 この原稿を書いているのは2015年1月ですが、現在インフルエンザが大流行中です。おそらく皆さんがこれを読んでいる頃には流行は落ち着いており、B型インフルエンザがパラパラと出る程度ではないかと予想します。しかし、迅速診断キット、使われまくっていますね。来る患者来る患者全員、鼻に綿棒を挿入し迅速検査を行っているという風景が日本全国で見られます。今回は、この迅速診断キットの落とし穴について考えたいと思います。

迅速診断キット陽性=インフルエンザ?
 インフルエンザの迅速診断キットは、イムノクロマト法と呼ばれる方法でインフルエンザ抗原を検出するものです。この検査キットが優れものであるのは間違いないのですが、けっこう落とし穴があります。最も大きな落とし穴の一つは、その感度です。感度というのは「本当にインフルエンザであるヒトのうち、このインフルエンザ迅速診断キットで陽性となるヒトの割合」のことです。インフルエンザ迅速診断キットの感度はだいたい60%くらいと言われています1)。つまり!インフルエンザの人が100人いたら40人は迅速診断キットをやっても陰性って出ちゃうってことです!これってけっこう驚きじゃないでしょうか。

 さらに、インフルエンザを発症して間もなくは特に感度が低く、発症12時間以内だと感度は35%だった、なんて報告もあります2)。感度35%というと、インフルエンザであっても陽性と出る人の方が少ないということになります。多くの医師は、この「迅速診断キットは発症早期は感度が悪い」という事実を知っています。しかし、肝心の迅速検査の結果の用い方がしばしば間違っていることがあります。

 先日、うちの7歳の娘が39度の発熱と咳、咽頭痛のため、妻に連れられて近くの病院を受診しました。インフルエンザが流行っているということで、病院でちゃんと診断してきてほしいという小学校の方針だそうです。診察した医師も当然インフルエンザっぽいと思ったはずです。しかし、うちの娘は熱が出てからまだ6時間くらいしかたっていません。なんと、診察した医師はこう言ったと言います。

「今日は検査しても出ないだろうから、また明日来てね」

 妻は「また明日来るの…?」と肩を落としたそうです。確かに、インフルエンザの発症早期は迅速診断キットの感度が低い。本当にインフルエンザであったとしても、今やったところで迅速検査は陽性に出ないかもしれない。確かに、明日検査をすれば陽性になるかもしれない。でも…、このインフルエンザど真ん中の症状の娘が明日まで診断を待つ必要があるでしょうか?インフルエンザ流行期にインフルエンザに矛盾しない症状(発熱+咳+α)があれば、約80%の確率でインフルエンザであったという報告もあります3)。インフルエンザで学級閉鎖になりそうな学校に通っている小児に高熱と咽頭痛、咳嗽があれば、それはもうインフルエンザなのです。

著者プロフィール

くつな さとし氏●2004年山口大学医学部医学科卒。関門医療センター、市立奈良病院などを経て、2012年から国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。趣味はお寺巡りとダニ収集。

連載の紹介

忽那賢志の「感染症相談室」
感染症にまつわる臨床現場でのさまざまな謎や疑問を徹底的に究明。複雑に入り組んだ感染症診療に鋭いメスを入れていきます。

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