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最終回
「四重苦」の呼吸器内科を選んだワケ

2014/12/08
倉原優

 私は呼吸器内科医として7年あまり呼吸器疾患の患者さんを診てきました。他の診療科に勤務している医療従事者の方々にとって、呼吸器内科はどのように映るでしょうか?

 何の疾患を診ているのかよく分からない、なんかモニターを付けている患者さんが多くて忙しそう、呼吸器症状の訴えでコールが多そう…などなどあるでしょうが、まずは呼吸器内科病棟の実際を知ってほしいと思います。

(1)呼吸器疾患はつらい
 すべての呼吸器疾患には呼吸器症状があります。そして、その呼吸器症状の二大巨頭が「呼吸困難感」と「咳嗽」です。どちらも非常にツライ。私は毎日「しんどい」「苦しい」と何人かの患者さんから言われています。そんなネガティブな言葉をぶつけられる職場なんてイヤだと思う人もいるでしょうね。私も呼吸器内科で初めて研修したときはそう思いました。ベッドサイドに行って「お加減いかがですか?」と質問しても「もうあかん」という言葉しか返ってこない患者さんもいました。

(2)呼吸器疾患は治りにくい
 市中肺炎自然気胸といった呼吸器疾患は完治するのですが、多くの呼吸器疾患は慢性の病態でありなかなか治りません。むしろ、長く付き合っていくことが多い。呼吸器疾患の中でも慢性閉塞性肺疾患COPD)、気管支喘息肺がんの頻度は高く、患者さんの半数以上がこの3つの疾患のどれかに当てはまります。いずれも完治はほとんどない疾患です(肺がんの外科手術や抗がん剤による完全寛解例は除く)。

 また、症状緩和のための治療も行いますが、なかなか効果が出ません。ものすごい咳嗽を呈している患者さんに鎮咳薬を処方しても「全然効かん!」と言われることも数知れず。なかなかスカッと良くなる症状がないのが呼吸器内科の特徴です。

(3)呼吸器疾患は幅が広い
 呼吸器疾患は急性期から慢性期まで幅広い疾患が該当します。急性期疾患であれば、市中肺炎、自然気胸、肺塞栓など。慢性期疾患であれば、COPD、気管支喘息、肺がん、非結核性抗酸菌症など。メジャー内科と呼ばれる診療科は、すべて幅広い領域をカバーしていますよね。ただ、ほかのメジャー内科とは異なり呼吸器内科を志望する若手医師は少なく、幅広い呼吸器疾患を少数精鋭の医員だけで診療している施設もあるくらいです。そのため、呼吸器内科というのは基本的に忙しいです。喀血呼吸停止といった急変も多いです。

(4)処置が多い
 呼吸器内科は、気管支鏡、胸腔穿刺、胸腔ドレーンといった処置もあるので、医療従事者が“退屈”することはありません。循環器内科のカテーテル検査や消化器内科の消化管内視鏡検査ほど大がかりではないものの、ほどよく時間と労力を要するため、これもナースが忙しく感じる理由になっています。

私が呼吸器内科を目指したワケ
 オイオイマテヨ。こんな診療科に本当にやりがいがあるのか?とお思いですよね。呼吸器内科という診療科は、主訴が多彩で緩和しづらく、完治が難しい疾患が多く、扱う範囲も幅広い、処置も多いという四重苦のような診療科です。長年呼吸器内科医をやってきた私もそう思っています。そんな私が呼吸器内科を選んだのには理由があります。

著者プロフィール

くらはら ゆう●2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科に勤務。13年に書籍『「寄り道」呼吸器診療ー呼吸器科医が悩む疑問とエビデンスー』を刊行。現在、日経メディカルで「こちら呼吸器病棟」連載中。

連載の紹介

倉原優の「『寄り道』呼吸器ケア」
「根拠はあるのかな」と”寄り道”して考えることで看護のスキルはアップします。ブログ「呼吸器内科医」でおなじみの著者が、臨床ナースに役立つ知識を発信します。

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