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N95マスクなんて着けたくない!

2014/11/25
倉原優

図 N95マスク
鼻頭から目の下にかけて痕が残ってしまうことがある。

 ご存知の通り、N95マスク空気感染から身を守るための特殊なマスクです。救急外来、感染症内科、結核病棟などで活躍している高性能マスクですね。Wikipediaによれば、「米国労働安全衛生研究所(NIOSH)のN95規格をクリアし、認可された微粒子用マスク」とのこと。このN95規格というのは、0.3μmの微粒子を95%以上遮断できるものを指します。

 N95マスクは、呼吸器病棟では主に結核が疑わしい患者さんに対して用いられます。未知の感染症の時にも装着した方がよいですが、頻度から言えば「結核かもしれない」と主治医が疑っている時の方が多いでしょう。N95マスクが必要と判断されている場合は個室隔離されていることがほとんどでしょうから、個室に入る前にN95マスクを装着する必要があります。空気感染を予防するために装着するので、例えばMRSAで個室隔離されているような患者さんに対してN95マスクを装着する必要はありません。

 そういえば、一時期注目されたのに最近めっきりメディアにも取り上げられなくなったPM2.5。「あれっていったいどうなったの?」と聞かれることも多いですが、テレビで放送されなくなっただけで状況はあまり変わっていません。このPM2.5は大気中に浮遊する微粒子で、粒子径が概ね2.5μm以下のものを指します。そのため、網目の細かいN95マスクで十分捕集が可能です。PM2.5が注目された当時は、オイルショック時のトイレットペーパーのごとくN95マスクがバカ売れしたと聞きました。実はこのN95マスク、あまり女性には人気がありません。その理由は2つあります。

理由(1)化粧が落ちる
 私はある女性研修医にこう言われたことがありました。

女性研修医:「N95マスクって鼻に痕が付いて化粧が取れちゃいますね」

 当院のN95マスクはのようなアヒル型のものです。ほかにも、おわん型のマスクもあります。N95マスクの多くは、鼻と頬を密着させるためにワイヤーが入っています。そのため、N95マスクを外した後、鼻頭から目の下にかけてワイヤーの痕が残ってしまうのが難点です。

 痕が付くだけでなく、女性研修医が私に言ったようにワイヤーがこすれて化粧が取れてしまいます。結核病棟に勤務している看護師さんは、その日のアフターファイブにデートがある場合、非常に困ると愚痴をこぼしています。仕事が終わって私服に着替えたとき、鼻に付いたワイヤーの痕を見て「ウッソー!」という新人職員さんも多いです。

理由(2)息がしんどい
 私は普段から結核病棟の患者さんを診療していますので、毎日N95マスクを装着します。外来では結核が疑わしい患者さんがそれなりにいますので、常にN95マスクを装着している状態です。

 男性スタッフはそうでもないのですが、女性スタッフの多くが「N95マスクを着けて病棟の階段を上るだけで息がしんどいです」と言います。N95マスクを装着すると極めて強い密閉状態になるため、鼻呼吸では厳しいと思います。口呼吸で仕事をしていても、息がしんどくなってしまう女性は多いです。特に新人看護師さんの場合、階段を上るだけでゼーハー、ということもしばしば。

著者プロフィール

くらはら ゆう●2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科に勤務。13年に書籍『「寄り道」呼吸器診療ー呼吸器科医が悩む疑問とエビデンスー』を刊行。現在、日経メディカルで「こちら呼吸器病棟」連載中。

連載の紹介

倉原優の「『寄り道』呼吸器ケア」
「根拠はあるのかな」と”寄り道”して考えることで看護のスキルはアップします。ブログ「呼吸器内科医」でおなじみの著者が、臨床ナースに役立つ知識を発信します。

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