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「ギュー音」「ハイザツ」では正しい情報共有になりません
聴診所見はウィーズとクラックルの2つを基本に

2014/08/06
倉原優

図1 ウィーズの成り立ち

看護師さん:「腹部のグル音は正常で、肺にもギュー音はありません」

 ある日、こういった言葉を使っていた看護師さんがいました。グル音は腸蠕動音のことですが、ギュー音という聴診所見はそのとき初めて耳にしました。

 私は研修医の頃、聴診所見にはおおまかに4つあると教えられました。すなわち、rhonchi(ロンカイ)、wheezes(ウィーズ)、coarse crackles(コースクラックル)、fine crackles(ファインクラックル)の4つです。国際肺音学会という学会があり、そこでは日本人の三上理一郎先生が発案した呼吸音の分類1)に基づいて個々の聴診所見について定義がなされています。聴診用語は、突き詰めると非常にヤヤコシイ。音の高さが何メガヘルツ、音の長さが何ミリ秒…などなど私もお手上げになるくらいマニアックな世界です。

 看護教育の現場ではあまり聴診所見について細かく教えてもらう機会はなく、何となく慣例的な用語を使うことが多いのが現状です。いくつかの病棟で調べてみると、「ギュー音」だけでなく、ほかの看護師さんは「ハイザツ(肺雑音)」という言葉を使っていました。確かに異常な聴診所見を伝えることは重要なのですが、ギュー音やハイザツという言葉ではお互いにどういった音が聴取されるのか、共有ができません。何より、これらは厳密には正しい医学用語ではないのです。

 そのため、個人的には看護の現場で用いるべき聴診所見を2つ提案しています。ずばり、上記4所見のうち「ウィーズ」と「クラックル」の2つです。

 ウィーズというのは、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)急性増悪など、気管支が狭くなった状態のときに聴取される「ピー」とか「ヒュー」とかいう音です。気管支喘息発作の患者さんがいたらぜひ聴診させてもらってください。胸に聴診器を当てると、笛のような音(笛声音)が聴こえるはずです。気管支喘息やCOPD急性増悪の場合、健康な人とは違って細い気管支がアレルギーや炎症で狭くなっています。太い管と細い管をイメージしてもらえれば分かると思いますが、細い気管支の方が高い音が出ます。ただでさえ息がしんどい状態で気管支も細くなっていますから、無理矢理呼出しようとした息は笛のように高くなるのです(図1)。

著者プロフィール

くらはら ゆう●2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科に勤務。13年に書籍『「寄り道」呼吸器診療ー呼吸器科医が悩む疑問とエビデンスー』を刊行。現在、日経メディカルで「こちら呼吸器病棟」連載中。

連載の紹介

倉原優の「『寄り道』呼吸器ケア」
「根拠はあるのかな」と”寄り道”して考えることで看護のスキルはアップします。ブログ「呼吸器内科医」でおなじみの著者が、臨床ナースに役立つ知識を発信します。

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