
イラスト:立花 満
宮島葉子さん(43歳、仮名)は、A病院の循環器病棟の看護師です。2月の初め、彼女の母の宮島定子さん(81歳、仮名)がA病院に緊急入院しました。脳梗塞でした。素早い診断と治療が功を奏して大きな後遺症もなく経過し、2月中旬には同病院の西3(回復期リハビリテーション病棟)に移り、3月初めごろの退院に向けて療養計画が立てられました。西3は葉子さんの古巣です。
定子さんが西3に移ったころ、葉子さんは明け方に父・洋輔さん(79歳、仮名)からの電話で起こされました。
「母さんに面会できるように、何とか便宜を図ってくれ。母さんの今度の病棟は、葉子が前にいたところだろ」
「はあ? コロナ禍での面会制限について説明があったでしょ。何とかなんて絶対にできない!」