日経メディカルAナーシングのロゴ画像

ティッシュで包んだ入れ歯を捨てちゃった!

2019/04/18
小林光恵

イラスト:立花 満

 先日、訪問看護師の男性Jさんとお茶を飲んで、なぜかティッシュの話で盛り上がりました。

「オーバーテーブルとかに、くしゃっとなったティッシュがあったら要注意でしょ」

「ですね。何かを包んだものだと思った方がいい。鼻水とか痰が付いたのなら、だいたいの方はゴミ箱に入れますから」

「そうね」

「周りの人からこれまでに聞いた『うっかり捨てそうになったティッシュの中身』は、補聴器、ブローチ、結婚指輪、あめ、せんべいなどなどいろいろありますよ」

「処置に使用するものもありそう」

「胃瘻チューブから半固形栄養剤を注入するときのアダプターを捨ててしまったという話も」

「いかにもありそう。日本は包む文化だもんね。特に高齢者は包みがちな気がする」

「硬貨とか千円札とかを包んで……というケースは包み方がきちんとした感じになるからすぐ分かって、即、丁重にお断りするよう身構えます」

「人に御礼金や小遣いを渡すときに裸ではダメだから……ってね」

「使用後のスプーンやお箸を洗わないでティッシュで包む方もいますが、あれをやるとティッシュがこびり付いてしまうんですよね」

「ティッシュで包むものは、なんといっても入れ歯が多いような気がする。特に部分入れ歯」

 そう言い終えて私は、紅茶のおかわりをポットから注ぎながら、数年前の成人式の日に看護学生が「禁煙啓発イラスト入りのティッシュ」を配ったことや、看護師国家試験の会場で机上にポケットティッシュを置く場合は試験官の許可が必要らしいことを思い出しました。それを話題にしようとして顔を上げると、なんとJさんが目に涙を浮かべています。ティッシュの話題になってから、彼は一瞬遠い目になったりして少し様子が変だなと思ってはいたのですが……。

「すみません、Bさんという利用者と関わった2年間を思い出してしまって。彼女のことを思い出すと、鉄拳さんのパラパラ漫画を見たときのような気持ちになって。話してもいいですか?」

 私はうなずきました。

利用者との距離の取り方を間違えた?
「Bさんのお宅を初めて訪問した日、ティッシュに包んで置かれていた彼女の部分入れ歯を、僕は血圧測定のときにゴミ箱へ捨ててしまったんです。それに気付いたときには、Bさんの娘さんがゴミをまとめてゴミ置き場に捨ててしまった後で、僕はあわててゴミ置き場へ飛んでいき、入れ歯を探しました。次の訪問先に電話して、時間をずらしていただいて。幸い、見つかりました。Bさんは『血相が変わっていた』と言って僕を指さし、女子高生みたいにケラケラ笑いました。このとき僕は28歳、Bさんは83歳でした。

連載の紹介

小林光恵の「ほのぼのティータイム」
人気漫画「おたんこナース」の原案者である著者が、医療・介護の現場にまつわる話題から看護師のプライベートな悩みまで、気になるテーマを取り上げます。看護師が日常の中でふと感じる疑問や悩みなどに対して、著者ならではユニークな視点から新たな提案をします。仕事で疲れてホッと一息つきたい時におススメのコラムです。

この記事を読んでいる人におすすめ