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意外と多いナースの更衣室の悩み

2017/02/25
小林光恵

イラスト:立花 満

 看護師のA田さんは、更衣室でのある出来事をきっかけに、勤務している病院を辞めようと考えているそうです。

 ある朝A田さんは、早めに勤務病棟に到着する必要があり、急いで白衣に着替えて更衣室を後にしました。

 そして10時過ぎとなり、更衣室のロッカーに鍵をさしたままだったことに気づきました。

 スマートフォンや財布などは勤務病棟のそばにあるミニロッカーに入れてあるものの、結婚指輪など貴重な私物は、更衣室のロッカーに置いていました。また、鍵をさしたままの状態は他の人たちにとっても気持ちいいものではないだろうと考え、彼女は昼休みになると同時に更衣室に駆け込んで鍵をしめ、再び足早にその場を離れました。電話連絡などの私用がいくつもあり、気忙しい昼休みだったのです。

 勤務が終わった夕方。病棟を後にしようとするA田さんは、看護部の職員に呼び止められ、「同行するから更衣室のロッカーを開けてみせてほしい」と言われました。理由を問うてもその人は「とにかくお願いします」と言うだけで、有無を言わせない雰囲気でした。

 仕方なくA田さんはその職員と一緒に更衣室に行き、自分のロッカーを開けてみると、なんと、誰かの使用済みの白衣が投げ入れたように中にあるではありませんか。

「あら…」

 看護部の職員はそうつぶやくと、落胆したように小さくため息をつき、言葉を続けました。「最近、『白衣がなくなった』という看護師からの届出が多かったんです。今日、昼休みにあなたが逃げるように更衣室を出ていくのを見たというメモが看護部に投げ込まれました。まさかと思ったけれど……」

「ちょっと、待ってください!」

 鍵がついたままであることに気付いた誰かが、クリーニング行きの大ワゴンの中にあった使用済白衣を私のロッカーに入れたのだな――。A田さんはそう思いました。A田さんのロッカーのある並びは、死角とも言える奥まった場所にあります。そのためいたずらがしやすいのか、以前には彼女の隣のロッカーの前に誰かの飲みかけのジュースが置かれていたり、そのそばのロッカーの上にはまったく関係ない人の使用済白衣がたくさん載せられていたこともありました。

 A田さんは、自身の行動について状況を詳しく話しました。しかし、看護部の職員からは次のような返答が。「たとえあなたが何もしていないとしても、あなたには疑われる隙があるということですから」

 翌朝には、A田さんのロッカーのそばの壁に「盗難注意!」という張り紙が貼られていたといいます。
 
 A田さんはいいます。「張り紙を見て、『ああ、この病院の管理の人たちは、すぐに職員を疑える人たちなんだ』って思えてきてね。何かの手違いによる紛失かもしれないのに、盗難と断言してしまうのもおかしいと思ったし。なんだかげんなりしてしまってこの病院で働く意欲が一気に失われてしまいました」

著者プロフィール

小林光恵(作家、看護師)●こばやしみつえ氏。看護師、編集者を経て1991年より執筆業を中心に活動。漫画「おたんこナース」、ドラマ「ナースマン」の原案者。2017年より看護師としてデイサービスの現場で週3のアルバイト中。エンゼルメイク研究会代表(2001年~)。看護に美容ケアをいかす会代表(2016年~)。最新刊『介護はケアマネで9割決まる!』(扶桑社、2018)など著書多数。

連載の紹介

小林光恵の「ほのぼのティータイム」
人気漫画「おたんこナース」の原案者である著者が、医療・介護の現場にまつわる話題から看護師のプライベートな悩みまで、気になるテーマを取り上げます。看護師が日常の中でふと感じる疑問や悩みなどに対して、著者ならではユニークな視点から新たな提案をします。仕事で疲れてホッと一息つきたい時におススメのコラムです。

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