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新パラダイムの幕開け!
救急医療と在宅医療の“お見合い”大作戦

2015/03/06
木澤晃代

 2月7日、パシフィコ横浜で「みんなで支える救急医療~地域医療再編へのKEY」をメーンテーマに、第65回日本救急医学会関東地方会が開催されました。第52回救急隊員学術研究会も同時開催だったので、大勢の参加者が集まりました。とてもステキなテーマですよね。

 このうちの看護プログラムでは、「救急訪問看護」というタイトルのシンポジウムがあり、救急と在宅を知る医師と、救急と訪問の看護師がシンポジストとなり、討論しました。

 実はこの企画、私が委員を務める看護部会プログラム委員会からの発案でした。「看護部会を盛り上げよう」というのが根本的な趣旨ですが、本連載でもご紹介した「救急看護師が、在宅医療への理解を深める必要性を考えるきっかけになれば」ということで実現したシンポジウムになります(関連記事:「救急訪問看護師」っていうのもありでしょ!)。

 看護も細分化してきています。全人的な患者をみる視点では、領域は関係ないと思うのですが、非がん患者ばかりをみていると「がん患者はみられない」、成人ばかりをみていると「小児患者はみられない」、回復期にいると「急性期をみられない」なんてことになりがちです。他方、年齢や臓器別にみる制限がないという点で、救急看護と訪問看護は、時期は異なっていても全人的な患者として全身をみる点は同じではないかと思っています。

在宅医療を見越した調整が必要
 さてさて、シンポジウムの司会には、山本五十年先生(湘南真田クリニック院長)と、浅香えみ子さん(獨協医科大学越谷病院副看護部長)、コメンテーターに太田祥一先生(恵泉クリニック院長、東京医科大学救急・災害医学分野)をお迎えしました。

 話題提供として、演者の訪問看護認定看護師の佐々木真弓さん(亀田総合病院地域医療支援部)は、病気や障害があって地域で暮らす高齢者の救急外来受診者には、身体的問題以外に、患者家族のセルフケア不足があり、訪問看護師が調整することの重要性、また、救急看護師との連携協働が不可欠であることを強調されていました。

 次に、同じく訪問看護認定看護師である木村美佐子さん(JA訪問看護ステーションいせはら)は、高齢者だけでなく、難病、がん、小児の利用者が増加していており、訪問看護のニーズが多様化していることを踏まえ、小児看護や緩和ケア、褥瘡ケアなど専門性の高い看護師との同行訪問の必要性を述べられていました。また、情報共有を効果的に行うこと、生活と医療の統合を行い、安心して在宅療養できる体制構築の必要性を話されました。

 そして私も、病院事業と訪問・居宅事業の双方を運営している施設の立場から、在宅への同行訪問、救急搬送された患者の在宅復帰に向けた調整、救急搬送後の諸問題などを報告しました。病院完結モデルの医療から、在宅医療を見越した病院での調整が必要であり、救急医療と在宅医療は治療と療養という場とリソースの違いによって患者の見方が異なるだけで、「患者に最善のケアを」という基本は同じ。だからこそ相互理解のための情報共有が必要だと思います。

 最後に、佐藤陽二先生(越谷ハートフルクリニック院長)からは、病院で救急医療に携わっていたご経験を基に地域の救急医療と在宅医療を担う有床診療所を開設され、年間20数人、これまでに計120人もの患者を在宅で看取られたお話を伺いました。もっとも、在宅患者はすべて自宅で看取っているわけではなく、入院での看取りを希望する家族には、できる限り希望に沿った形で対応しており、看護師、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなど多職種との連携を強化し、患者家族が安心して介護を行える環境を整備することの重要性を強調されていました。

 コメンテーターの太田先生からは、「救急医療」「在宅医療」と限定せず、多方面から患者家族が安心して暮らせる医療を提供する必要があるとコメントいただきました。

 討論では、双方の理解、歩み寄り、シームレスな患者ケアが重要ということは統一の見解となり、さらなる議論の必要性が示唆されました。病院モデルの医療を、在宅医療に無意識に要求していないか、「まずはお互いの医療体制をよく知ることからまず始めよう!」ということになりました。言うなれば、救急医療と在宅医療の“お見合い”といった感じでしょうか。

著者プロフィール

木澤晃代氏(筑波メディカルセンター病院看護師長)●きざわ あきよ氏。1997年から筑波メディカルセンター病院勤務。ICU・救急外来勤務を経て、2004年救急看護認定看護師資格取得。08年東京女子医大大学院卒業、急性・重症患者看護専門看護師資格取得。11年特定看護師(仮称)養成施行事業実施課程、12年看護師特定行為・業務試行事業を経て、臨床現場で活躍中。

連載の紹介

木澤晃代の「救命救急の現場から」
特定行為に関わる研修修了者”として救急領域で実践活動を行っている筆者が、臨床現場のさまざまなエピソードを基に、看護業務のあり方、さらには仕事と家庭との両立、専門性の追求といったナースのキャリアに対する想いを綴ります。

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