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臨床経験を重ねただけでは超えられない壁

2014/12/09

 2014年10月10~11日、大阪市で第16回日本救急看護学会学術集会が行われました。「救急領域における看護教育~基礎教育から現場教育につなぐ~」をメインテーマに、全国から、1887人の参加者が集まりました。ここ数年、参加者がぐ~んと増えています。

 演題は盛りだくさんで、救急領域の教育だけでなく、院内トリアージ、倫理、災害、感染、看護研究、院内急変対応など、多彩なプログラムとなっていました。シンポジウムやパネルディスカッションでは、基礎教育から臨床看護教育につなぐための教育方法や、教育評価の指標などの検討について、具体的な実践内容が発表されていました。

 教育の方法としては、インストラクショナル・デザイン(Instructional Design;ID)、シミュレーション教育など、現象を思考して、知識や技術を獲得するための方法論などが紹介され、議論されていました。現在、最も注目されている教育方法ですね。

 IDは、教育を設計(デザイン)して効果的な成果を挙げることを目的としていて、eラーニング教材やシミュレーション教育等に用いられる概念であると言われています。教育を分析し、戦略的にアプローチしていくための考え方で、学習理論(心理学)や、情報・メディア技術、コミュニケーション学などを基盤に、「いかに学ぶか」「教育とは何か」をデザインするものであると言われています。

 平たく言うと、「教える人もハッピー、教えられる人もハッピー」、双方の「学ぶって興味深くて愉しい」といった知的好奇心をくすぐるものということでしょうかね。確かに教えることって、教えられる側との相互作用ですよね。ケアリングの概念と似ているな……。

「SpO2低下→起座位」だけでOK?
 さて、私も「救急領域の臨床看護教育の基本となるもの~問題思考と構造化~」ということでパネリストとして発表しましたが、「臨床看護教育の方法と評価」という、大きな命題だったので、まとめるのにとても時間がかかりました……。

 救急看護が対象とするものは、疾患や年齢、性別、場に偏りがありません。そして、情報が少ない中から自ら思考し臨機応変な対応することが必要不可欠です。臨床現場は応用の連続であり、手取り足とり指導している十分な余裕はあまりないのが現状です。まさに即戦力としての対応が求められており、救急領域での臨床経験がとても重要であることに間違いはありません。

 しかーし、単に臨床経験を重ねただけでは、一見エキスパートのような臨床実践を行っているように見えても、必ずある一定のところで行き詰まります。

 臨床経験が長くなると、業務を行うことには慣れます。例えば、「患者さんのSPO2値が低下した!」という場面。

 ありがちなケアとしては、ベッドアップすることが多いと思いますが、その時、「呼吸が苦しいときは起座位」とパターンで覚えて実施することに留まるっている看護師は多いのではないでしょうか。もし、「この人の酸素化不良の原因は、拡散障害?シャント?」とさらに検索を行い、必要な身体所見をとって医師に的確な報告ができれば、患者の重症化の防止につながります。

 前者は、行為をパターンで認識しているだけです。そうなってしまう要因の一つは、行為の「意味付け」を考える効果的なOJT(on-the job training)の機会が臨床現場で乏しくなっていることだと感じています。

 パターン認識している臨床実践と、根拠に基づき予測性を持って場を見極め、柔軟に適切な対応を行う臨床実践は全く別物です。臨床教育においては、看護師の能力を評価表に沿って定量的に評価するだけでは不十分であり、自立的に学習する姿勢や、スタッフとの協調性というような定性的な評価が重要で、教育を構造化した取り組みが必要ではないかと思っています。

 結論としては、「OJTの機会を作って、臨床実践を丁寧に積み重ねて臨床判断の妥当性を検討してくことなのかな~」ということに落ち着きました。講演後の討議でも、基礎教育でも臨床教育でも、学習者の内発的動機づけを促進するような「きっかけ」や「機会」作りが鍵になると話されていました。

著者プロフィール

木澤晃代氏(筑波メディカルセンター病院看護師長)●きざわ あきよ氏。1997年から筑波メディカルセンター病院勤務。ICU・救急外来勤務を経て、2004年救急看護認定看護師資格取得。08年東京女子医大大学院卒業、急性・重症患者看護専門看護師資格取得。11年特定看護師(仮称)養成施行事業実施課程、12年看護師特定行為・業務試行事業を経て、臨床現場で活躍中。

連載の紹介

木澤晃代の「救命救急の現場から」
特定行為に関わる研修修了者”として救急領域で実践活動を行っている筆者が、臨床現場のさまざまなエピソードを基に、看護業務のあり方、さらには仕事と家庭との両立、専門性の追求といったナースのキャリアに対する想いを綴ります。

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