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救急医療にこそ緩和ケア

2014/09/08

 前回のコラムの反響が予想以上に大きくて驚きました。人生経験に基づいた価値観、医療者としての姿勢、考え方なんかが色濃く影響する問題だからでしょうか。倫理的なモヤモヤはすっきり晴れないけれど、モヤモヤしているものは何かを発言して、議論できる風土が重要ですね。とかく急性期は治療中心で、こういう問題は発言しにくい印象がありますが……。

急性期の患者・家族ケアに必要な「緩和ケア」
 経験的に、DNAR(Do not attempt resuscitation:心肺蘇生を試みない)になるような状態の患者の家族が、目の前の現実がなんとなく分かるようになるのは、2週間ほど経ったころのような気がします。1週間くらいまでは、「また目を覚まして意識が戻るかもしれない」「元の生活に戻れるかもしれない」と、駄目だと分かっていても目の前の現実を認めたくない気持ちが大きい状態です。2週間くらい経つと、医師の説明が現実味を帯びてきて、「本当のことなんだ……」と否応なしに現実に向き合わざるを得なくなります。

 「昨日も帰ってこなかった、今日も帰ってこなかった、間違いなく現実なんですね……」と。

 治療を差し控える段階になった時に、私たちがしなければならないことはなんでしょう。

 治療の効果が期待できないとすると、家族は、「せめてできるだけ苦しまないでほしい」「痛くはないのかな、苦しくはないのかな?」と思うようになります。苦しそうな患者をみることが家族の苦痛になるので、それを最小限にすることが重要です。

 外観の変化は予測できることなので、元気だったころの面影がなくならないよう、できるだけ外観を整容したり、家族が「十分にケアされている」と実感できるようなケアを行うことが、私たち看護師にできる関わりだと思います。

 そう、急性期の家族ケアって、「緩和ケア」なんだと思います。 

 改めて「緩和ケア」なんていうと、大ごとのように聞こえるかもしれませんが、家族の「心の痛み」を緩和するために関わることって大切ですよね。がん医療では緩和ケアがクローズアップされていますが、急性期医療での緩和ケアは、まだまだ概念もないような感じですね。医師同士のコンサルテーションもあまり行われていないような……。

 COPDの急性増悪や神経系の変性疾患の症状コントロールのために行う緩和ケアって、とっても重要だと思うのですが、主治医によっても考え方はまちまちなので、重要なタイミングを逸してしまったりするケースに時々遭遇します。

 「非がんの患者にも緩和ケアを!」が私のかねてからの願いです。

著者プロフィール

木澤晃代氏(筑波メディカルセンター病院看護師長)●きざわ あきよ氏。1997年から筑波メディカルセンター病院勤務。ICU・救急外来勤務を経て、2004年救急看護認定看護師資格取得。08年東京女子医大大学院卒業、急性・重症患者看護専門看護師資格取得。11年特定看護師(仮称)養成施行事業実施課程、12年看護師特定行為・業務試行事業を経て、臨床現場で活躍中。

連載の紹介

木澤晃代の「救命救急の現場から」
特定行為に関わる研修修了者”として救急領域で実践活動を行っている筆者が、臨床現場のさまざまなエピソードを基に、看護業務のあり方、さらには仕事と家庭との両立、専門性の追求といったナースのキャリアに対する想いを綴ります。

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