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「DNARだから何もしない」という誤解

2014/08/11

 6月18日に医療介護総合推進確保推進法が成立しました。これにより保健師助産師看護師法が改正されることになり、「特定行為に関わる看護師の研修制度」の創設が決まりました。特定行為の内容や区分、研修内容など具体的な検討が進められ、2015年10月から施行されることになりました。

 さてさて、一体どうなるのでしょう……。看護師のキャリアップの一つとなるのか、はたまた看護師全体のボトムアップとなるのか、報道では色々な意見がありますが、当事者である看護師たちからは、興味はないわけではないけど、どこかじ~っと静観している雰囲気が漂ってきます。創始期ですから、混沌としていてどうなるか見当がつかないですね。施行事業を実施した身としては、結局、施設ごとで実践内容が異なるようになるのではないかと思いますが……。

 さて、今回は、「蘇生を行わない選択」に関する患者家族の意思決定について考えてみたいと思います。皆さんのところではどうなっていますか~?

 DNAR≒何もしない?

 DNAR≠何もしない?

 モヤモヤ~

 患者さんに治療の効果が期待できず、終末期を迎える時期になると、蘇生処置や延命処置といわれる行為についての説明を行い、患者の意向(推定意思)と、家族の意向を確認することが必要になってきます。すなわち、DNAR(Do not attempt resuscitation)「心肺蘇生を試みない」という選択です。DNR(Do not resuscitation)とも呼ばれていましたが、これは少しレトロな言い方で、蘇生する可能性があっても「蘇生するな」という印象なので、最近はあまり使われない傾向になっています。

 救急領域でよく遭遇するのは、CPA(心肺停止状態)で搬送された患者が、心拍再開はしたけれど、脳蘇生ができず、臨床的な脳死状態と言われるケースです。数日経過をみれば予後の見通しがつくようになるので、回復の見込みがなさそうとなれば、医療者の間には「DNARだよね……」という雰囲気が漂います。つまり、「医学的には治療の適応はない、もしくは適応は限りなく少ない」という状況になり、看護師は「家族にDNARの説明はされているのかな……」「急変したらどうするんだろう……」と不安になり、医師にDNARオーダーの確認をしたりします。

 こうした状況になると、回診時の医師の足も日ごとに遠のき、何とも言いようのない空気が流れます。輸液も絞り、尿量が少なくなってくると、腎機能が低下し、免疫力も低下してくるので易感染状態となり、口唇ヘルペスや湿疹などができたり、頬がやせこけ、目や口が開いたままになったりと、患者の外観が変化してきます。まさにキュアよりケアの比重が多くなっていくわけです。

 ほかにも、CPAから低酸素脳症に陥った患者では、反射でビクッと体が動いた入り、刺激によって目をカッと見開いてはゆっくり閉じたりと、医療者が見ても心が痛くなるような光景が見られることがあります。家族の反応も、「動いてる!」(まだ諦める状態ではない)という場合と、「痛々しくてもう見ていられない」という場合とさまざまです。

著者プロフィール

木澤晃代氏(筑波メディカルセンター病院看護師長)●きざわ あきよ氏。1997年から筑波メディカルセンター病院勤務。ICU・救急外来勤務を経て、2004年救急看護認定看護師資格取得。08年東京女子医大大学院卒業、急性・重症患者看護専門看護師資格取得。11年特定看護師(仮称)養成施行事業実施課程、12年看護師特定行為・業務試行事業を経て、臨床現場で活躍中。

連載の紹介

木澤晃代の「救命救急の現場から」
特定行為に関わる研修修了者”として救急領域で実践活動を行っている筆者が、臨床現場のさまざまなエピソードを基に、看護業務のあり方、さらには仕事と家庭との両立、専門性の追求といったナースのキャリアに対する想いを綴ります。

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